孤独な狩人―カーソン・マッカラーズ伝

カー，ヴァージニア・スペンサー【著】〈Ｃａｒｒ，ｖｉｒｇｉｎｉａ ｓｐｅｎｃｅｒ〉/浅井 明美【訳】

国書刊行会（1998/03発売）

• サイズ A5判／ページ数 612p／高さ 22cm
• 商品コード 9784336040626
• NDC分類 930.28
• Cコード C0098

内容説明

マリリン・モンロー、テネシー・ウィリアムズ、ジプシー・ローズ、リー、Ａ・セイント・スーパー…。欧米の文学界、演劇界、芸術家たちとの華やかな交流、波乱に富んだ結婚生活、バイセクシュアル的愛に生きた、時代を先どりした作家の生涯を描く評伝。

目次

１章　ジョージアの少女時代
２章　ニューヨークの修業時代
３章　結婚と心の旅路
４章　ニューヨークに文壇の寵児現れる
５章　ミダーグ通り七番地の奇妙な家族
６章　ニューヨークシティとヤドー
７章　コロンバスとヤドー
８章　和解と再婚―コロンバスとナイアック
９章　ナイアックとパリ
１０章　沈む心と踊る心―ナイアックとブロードウェイ
１１章　名声と幻滅
１２章　さなぎから蝶へ
１３章　晩年―消滅と再生

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[どんぐり]

本書は心理的、肉体的に不具な人物の痛ましいほどの疎外感と孤独感を描いた作品で知られる米国の作家カーソン・マッカラーズの伝記。原著は訳本にクレジットの記載がないので詳細は不明だ。2段組みで600頁というボリウムで、重たいうえに読み終えるのに3週間を費やした。マッカラーズの代表作『心は孤独な狩人』（1972年刊、絶版）は新潮文庫で出た当初読んだが、この作品世界に比してこの伝記には引きつけられるものがない。作家を天才に仕上げようと意気込む母親、夫リーヴスの自殺、常に男性よりも女性のほうに肉体的魅力を感じる性

2013/06/27

[春ドーナツ]

４つの作品を耽読して、カーソン・マッカラーズのことを解説の範疇を超えてもっと知りたくなった。ジュリアード音楽院の授業料を紛失した出来事の詳細を知ることができるかなと思っていたけれど、曖昧で簡潔な記述だった。エピソードがレジェンドに昇華されたのだろう。リーブス（旦那）の心持ちはゼルダ・フィッツジェラルドにも通じるものがあるような気がした。ウィキペディアを見ただけでは、「晩年の小説なんだな」としか感じなかったけれど、「針のない時計」の創作過程がつまびらかにされるにつれ、奇跡を生み出したそのパワーに最も感涙す。

2020/10/28

[erierif]

『結婚式のメンバー』のジョンのモデルが若いカポーティだった可能性が高い、エリザベス・ボウエン、イサク・ディネセンとの交流、テネシー・ウィリアムズとは親戚のように親しく付き合っていたなどとても興味深かった。しかし伝聞が多くゴシップと言ってよい情報ばかり。依存症は語られず脳出血や癌についても医療記録が出てこない。書簡も講演の内容もない。このゴシップが小説とどう関わったかないのが物足りない。この本は本として、彼女の症状夫と母の関係の分析しなおし作品との関わりを客観的に書かれたものを読みたい。

2017/08/06

[ポカホンタス]

この本ではなく、マッカラーズの『心は孤独な狩人』（新潮文庫）を読んだのだが、古い本なのでここのリストに入っていない。何度も立ち止まりながらでしか読めなかった。重苦しいアメリカ南部の黒人差別の世界。２２歳の白人女性が書いたものとは思えない、描写力と黒人的世界への共感性。どんなに悲痛なことをテーマにした音楽であってもそれが音楽である以上、大いなる美しさに包まれている。それと同じことをこの小説に感じた。翻訳もいいのだろうが、小説の全体から細部に至るまで、音楽的な美しさが貫通していて、登場人物たちへの愛が滲む。

2011/04/23

[Miss.W.Shadow]

マッカラーズは障害者を描いたが取材はしなかった。内的なイメージのみが大切であった。

2011/01/21