感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
53
聖母が出現したルルドの町と奇跡を求めてそこへ集まる群集についてのルポ。語られるのは、居並ぶ病苦の悲惨と人々の切なる祈り、「この上なく醜い趣味」の聖堂や「汚れ水と化した」水浴場について。届かない祈り、起きない奇跡と作者の見たいくつかの癒しについて。下卑た喧騒に満ち、しかし熱い祈りと霊性に満ちたルルドについて。そうルルドとは、癌の苦しみと血膿の中で本書を執筆していた作者にとっての光であり、同時に第一次大戦を控え「迫りくる崩壊の不安におののく」世界に対し、死に行く彼が差し示せる"もの”でもあったのだと思います。2019/01/15
飴玉
1
作者は自分自身に正直なのだろうけれど、なんとなく、愛が足りない。病者に対する表現の中に、「そんなことを書いていいのか」とギョッとするようなものが随所にある。時代のため、という理由だけでは足りない。また、作者のなかで、信仰が自分自身と一致していないように感じる。<信仰を生きる自分>というより、あくまで<信仰>と<自分>なのだ。だから、信仰と無関係な人には参考になるかもしれない本だが、信仰のある人にはかえって躓きになり得ると個人的には思う。2014/06/08