感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なる
30
読み進めて行くと横溝正史の『犬神家の一族』というか金田一耕助の映像「ヨキ←」を思い出してしまう(お風呂とかプールで真似したくなるアレです)。事件の発端も不条理ならば、計画自体も不条理なこと極まりない。そんなに長くない物語の端々に作者の碩学がふんだんにあふれている。その上でこのタイトルとは。全体的に漂う不気味な雰囲気の中で語り部は淡々と話を進めて行く。読みにくいけど変態性も相まって素敵な作品。虚淵玄の祖父だそうで。『PSYCHO-PASS』をはじめとした胡乱な作風はしっかり受け継がれているかもしれない。2020/12/12
みつき
27
谷崎潤一郎の蓼食う虫のモデルになった男性だったので興味があり読了。横溝や乱歩とは少し雰囲気が違い、ポーなどの海外文学を読んでるような気分になりました。論理的で冷静な筆致がより人間の狂気や欲望を引き立て、偏執的な人間が浮き彫りになっている印象。出世作の『天狗』よりも、美しい日本の冬の風景描写のあった『涅槃雪』と、『私刑』『零人』が面白かったです。警視庁の鑑識課で働いていた事もあるので、刑事の描写に真実味があるし、心理学的要素を作品に盛り込んでいるところは当時、新鮮だったのかもしれないなぁ。2013/01/31
yai
17
なかなかに読みにくい文体の、明治生まれの著者による昭和ミステリー。これまた東西ミステリーより。いやはや動機、トリックなど突拍子もないものも多く、今で云うバカミス……なんて表現すると流石に失礼かしらん。表題作『天狗』は高飛車な女性にカチコンきた男が凄まじい執念により、大自然の力を大いに活用し殺人を企てる話。カチコンきた理由と大自然の活用法がまァ、ヤバい。Y字のほら、パチンコってあるでしょ?あの原理で……っとコレ以上はネタバレになるな、是非笑ってほしい。収録作では文通により事件の全貌をあかす二作目が好み!2020/03/23
メイ&まー
13
短編集。天狗…ちょ、そんな理由で殺人を?更にそんな手段で?ええっしかもやりおおせたんかい!と二重三重にびっくりな表題作。どれも文章が独特でとっつきが悪いし、当時の風俗もちんぷんかんぷんなので難儀するんだけど、そこは短編、少し辛抱すれば終わるし(笑)、何よりお仕舞いに、えっ!と思うようなどんでん返しと妙なカタルシスがあるもので意地になって読んだ。何だか三分の一くらいは訳が分かってないはずだけれど、、面白かった。2014/12/27
hirayama46
6
柴田錬三郎の小説のアイディア出しなどもやっていた大坪砂男の短編集。ありえなさ溢れるへんてこ物理トリックと謎の動機がインパクト大な表題作をはじめ、見せ方に工夫を凝らした、ある意味凝らしすぎた短編群であり、たいへん愉快でありました。へんてこなミステリが好きな方は是非。2017/12/15
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- 和書
- 事業承継 〈vol.3〉