感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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4
10/10 大いなるアメリカポスト・モダン文学よ、大いなる親たれ!冷戦時代の国家を比喩パロディ化したまえ、アナスターシャをマックスをクリーム髪女史を愛し給え。EATせし食べ食べられるか、全部落第すなわち全部合格なのだ 2024/03/30
ミコヤン・グレビッチ
3
(上巻の感想から続く)そんな道具立てを用いながら、登場人物たちに延々と哲学的な会話をさせたり、ギリシャ悲劇「オイディプス王」の翻案を堂々ノーカットで挿入したりする。あたかも、話はコンパクトに面白くまとめるべしという常識に、あえて逆らうかのように。この「やぎ少年ジャイルズ」がやたらと長い理由、そしてシンプルなエンタメ作品には終わらない理由もそこにある。1960年代の作で、私自身はまあまあ面白く読んだけれども、たとえば「東西冷戦」と言われてもピンと来ない年代の人たちには、さすがにちょっと無理かもしれないな。2021/09/26
Mark.jr
3
読み直し。 コンピューターに支配され東西に分かれて対立している巨大な大学キャンパスを舞台に、ヤギとして育てられた少年ジャイルズが迷える学生たちを合格へと導く...。つまり、これは学生闘争盛んだった世界状況の風刺であり、主人公はキリストのパロディなわけです。言葉遊びやら下世話なギャグや話の脱線を繰り返すテクストに、当時潮流していたアメリカのポストモダン・実験文学の熱気が感じられ圧倒されます。2020/07/19
ヤーマダ
2
饒舌なインテリのおじさんが下品で卑猥な冗談を連発しながら東西冷戦下における救世主による救済みたいな話を大学キャンパスの学園紛争に喩えて脱線を繰り返しながら長々と語っているのを聞き終わって「難しくてよく判らない話も出てきて頭がクラクラしたけどトータルでは話上手でユーモアもあったし、面白かったな」と思えるような作品。バースの最高傑作ではないが、彼にしか書けないであろう問題作かと。児童文学のようなタイトルだがけっして子供向きではない。2013/02/02