出版社内容情報
日本幻想文学集成 29
花田清輝 著
池内紀 編
中世連作「伊勢氏家訓」「開かずの箱」ほか「テレザ・パンザの手紙」「林檎に関する一考察」「歌」「海について」「ものぐさ太郎」「御伽草子」「石山怪談」「舞の本」等スーパー小説全16篇を収録。
池内紀 (イケウチオサム)
一九四〇年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。ドイツ文学者。主要著訳書――『ウィーンの世紀末』白水社、一九八一年。『温泉』白水社、一九八二年。『恋愛読本』彌生書房、一九八四年。『猿飛レゲンデ』沖積舎、一九八五年。ブライ『同時代人の肖像』法政大学出版局、一九八一年。アメリー『罪と罰の彼岸』法政大学出版局、一九八五年。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
57
幻想小説かと思いきや、全てエッセーで拍子抜けした。しかし、下手に設定をこねくり回した小説よりも読みやすく、小気味が良い。それは一つのモチーフにつき、縦横無尽に語るもそこに作者ならではの美学が通っているからだろう。「ものみな歌で終わる」は戯曲風エッセイ。オチが題名通りになってる可笑しみがいい。「開かずの箱」の本末転倒さへの皮肉、「石山怪談」で何故、奇跡は語られるのか、「歌」の生への賛歌、「林檎に関する一考察」の実存性と可能性なども面白い。2023/06/21
渡邊利道
2
とうとつに読みたくなったのでまずはあまり幻想文学とは関係がない感じがする傑作集から。講談の味がある切れ味鋭く余裕のあるエッセイと小説の境界線をすいすいゆく短い文章たち。文化と歴史の交叉点を抽出する寓話の魅力があるし、こういう批評的エッセーを書いてみたいものだなあというふらふら浮かれた感想も浮かぶ。2017/08/15