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出版社内容情報
「三角帽子」の作者として名高いアラルコンの中短篇2篇を収録。自殺をはかり意識が朦朧としているヒル・ヒルの前に死神が現れた。死神はしばらくの命と願望の成就を約束するが……。他に怪談「背の高い女」。
著者紹介
アラルコン
1833-91。スペインの小説家。「三角帽子」が名高い。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
23
「死神の友達」は、死神が主人公に医者になるように言ったところを読んだとき、落語の「死神」と同じような話になるのではと思った。調べてみたらこちらのほうが元ネタらしい。確かに「死神」の発想自体、西洋のものだろう。本当に落語と同じオチになるのか知りたくて、また、読みやすいこともあって駆け足で読む。フェリペ5世の絡むフランスとスペインの王位継承合戦の迷路や、ヴェルサイユを模したラ・グランハ宮殿といった道具立て、民間伝承らしい(つまりどこか現実の泥臭さを秘めている)唐突な展開も楽しめる。2018/08/24
みつ
19
ボルヘス篇の『バベルの図書館』シリーズ28冊目。スペインの作家アラルコンの中短篇それぞれ1作を収める。前者の『死神の友達』は、彼にしか見えない死神が病人のベッドに立つ位置によって死期を予言するという(p56)有名な落語とも共通する能力を授かった若者の一部始終。6割程過ぎた段階で、「物語が本当に面白くなり・・出すのは実はここから」(p98)と語り手が大見得を切るのも面白い。事実、物語はとんでもない方向に展開し、世界を巡る空中旅行が始まり、キリストとの対決まで回想される。「結末」の凄まじさは類を見ない。 2022/08/07
藤月はな(灯れ松明の火)
18
表題作は序盤から中盤にかけては落語の「死神」みたいなのにラストのオチに呆然。でも死神の人間めいていて実は「死」という理不尽さを表している所は凄味を出しています。「背の高い女」は解釈が別れますが観測する人によって異なってくるんでしょう。2012/12/09
em
14
「死神の友達」フェリペ五世は馴染みのない名前ですが、受け口の肖像画が有名なカルロス二世の次代で、スペイン継承戦争の時代。18世紀ともなるとブルボン、ハプスブルクの系図が交差してかなり複雑。そんな王の思惑に接近する、死神を友とするヒル・ヒル。歴史物と幻想譚が混ざった話かなと思いつつ読み進めると、呆気に取られるような展開が待ち受けていました。ボルヘスいわく「ダンテ的な大団円」。ファウスト的でもあり、SF、黙示録的でもあり…。「無責任な即興の連続とも見える」という前半も楽しめた一冊。2017/10/29
きりぱい
12
生きる希望を失ってまさに死のうとした時、冷たい手を肩に置き「やあ、友達!」とつぶやいてきたのは死神。どうなるのかとゾクゾクしていたのに、意外にも怖くない。死神の挙動から死期を読み取れるのが面白く、その手段を利用して地位を得、恋人にも再会。それがまあ!この結末は決して人には教えないでください的な展開となって、死神のすみかに至るまで付き合わされる旅のスケールといい、怖くないのに意外性が。信仰思想的にはハッピーエンド。死神は本当にいい友達だった?「背の高い女」の方がまだ怖いけれど、疫病神て。2012/04/21