出版社内容情報
パーソナリティ障害の第一人者が母を失うことの自身に与えた影響を、精神療法を実践してきたプロとしての立場から考察する。
内容説明
母と私を結びつけていたのは、心の奥の深い傷。大ベストセラー『愛着障害』『母という病』の著者が急逝した母親の記憶を辿りながら、自らとの関係を初めて明かし、喪失の果てしない悲しみとその先にある希望を綴った、著者初のノンフィクションにして最高傑作。
著者等紹介
岡田尊司[オカダタカシ]
1960年、香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などに勤務。2013年から岡田クリニック院長(大阪府枚方市)。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療の最前線で、現代人の心の問題に向き合い続ける。2016年、作田明賞受賞。著書多数。小説家・小笠原慧の顔も持ち、横溝正史賞を受賞した『DZ』『風の音が聞こえませんか』(KADOKAWA)など、人間の異常性と崇高さが生む悲しみを描いた作品が多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒデミン@もも
63
男の人は、誰もがこんなに母を恋しいと思うのか。岡田先生、マザコンぽいところも多々あるが、親を亡くした気持ちは共感する部分がいっぱい。ああすれば良かった、こうすれば良かったと季節が巡るたびに想いは溢れ、涙で読めないかと思ったが、そうでもなかった。コロナ禍に亡くなられた方は、本当にお気の毒。でも、優秀な優しい息子さんを持たれたお母様は幸せだと思う。2021/03/24
pirokichi
20
友人に薦められて。昨年5月、著者の84歳の母親は故郷香川の病院で急逝した。その母親と共に過ごした時間についての回想を記したもの。複雑な家庭環境下での幼少期が中心で、よくこんなに覚えているなあと感心するくらい家族、親戚、友人のことなどかなり丁寧に赤裸々に記している。私は母のことを、母が何を思って生きてきたかどれくらい知っているだろうか。「新型コロナウイルス感染症のために、面会することも許せなかったとはいえ、心のどこかでその事態に甘えて、仕事や自分の都合を優先させていた自分がいたのではないか」は胸に刺さった。2021/11/30
kogufuji
8
母を、いつかわたしも失うだろう。そのときに何を思うのだろうと考えながら読んだ。著者の母の苦しさ辛さは相当なものだったし忍耐強かった。そしてそれを自分の子に語って聞かせていたからこうして彼女の人生は一冊の本になったのだと思う。あと興味深いのは母子関係だけじゃなくて、年上の従兄弟との付き合いが後の人付き合いにいかされてたりするところ。2021/08/03
peace land
6
長い話だけど、読めた。母の一生というのが良く描けていて味わえた。多くの人とのかかわりの中で人が生きれいることに気付いた。2021/04/16
owlsoul
5
『母親を失うということ』それは2020年5月に84歳の母親を亡くした著者の体験談であると同時に、幼い頃に母を亡くし、その喪失を抱えながら生き抜いた彼の母親自身の物語でもある。死に目に会えなかったこと、介抱できなかったことを悔いながら、著者はひたすら母親の苦難に満ちた人生を思い返し、書き記す。その営み自体、つまりこの著作の存在自体から、『母親を失うということ』の重大さが伝わってくる。「こんな名もなき女性がいたことを、私は伝えずにはいられない」という、あとがきの言葉にすべてが集約されているように感じた。2022/01/02