内容説明
ペリー来航の1853年…、北前船で栄える隠岐島に、黒船が来た。庄屋の息子・井上甃介は、巨大な鉄の船を航行させる異人に、憧れと恐れを抱く。「異国から村を守るには、世界を知らねばならぬ」、大いなる志を胸に京へのぼる―。甃介の50年にわたる奮闘、敗北、友の死、復讐、恋、そして罪…。舞台の隠岐は、鎌倉幕府を倒そうとした後鳥羽上皇・後醍醐天皇が流された倒幕・勤王の地。新田次郎文学賞『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』の著者が描く青春と動乱の幕末維新ロマン。
著者等紹介
松本侑子[マツモトユウコ]
作家・翻訳家。1963年、島根県出雲市生まれ、筑波大学卒業。1987年、『巨食症の明けない夜明け』で、すばる文学賞受賞。2010年、『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(光文社)で、新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
88
面白かったです。幕末から明治にかけての壱岐の島の物語。歴史に名を刻む人は多かれど、ここでの出来事は華やかな歴史の中には残ることはありませんでした。それでも自分の忠義に誓って生きる人物がいたということを忘れてはなりませんね。壱岐という島が犠牲者を出さなければ今の姿はないと思うと切なさをもこみ上げてきます。2017/05/14
to boy
26
「吹く風に 潔く散れ山さくら 残れる花は とふ人もなし」 幕末~維新にかけての動乱期に政に翻弄された隠岐の島の主人公達。古代より天皇と関り深いため尊王攘夷に身を捧げながらも明治政府のご都合主義などで死者まで出すことに。パリコミューンより早く自治政府を立ち上げた島民のことはもっと広く知って欲しい歴史です。これは多くの人に読んでほしい名著だと思います。読んだ後、心に静かな感動が響き渡りました。2020/01/12
to boy
21
まさか再読とは登録するまで気づきませんでした💦 一粒で二度おいしいとはこの事か。明治維新前後の動乱期に幕府と新政府に振り回された隠岐の島。攘夷を信じて官軍に入ったが新政府は開国して洋装に。然らば自治政府を立ち上げて攘夷を行おうとした主人公達の素直で純粋な気持ちと待ち受けた凄惨な運命が語られていました。歴史に翻弄され埋もれた人々の貴重な記録です。2022/11/17
kaoriction@本読み&感想 復活の途上
19
「歴史は、生き残った勝者が作る。勝者の正義だけが、後世に伝わる。斃れた者の思いは、歳月の流れに沈み、やがて忘れ去られていく」。そんな風に忘れ去られてほしくない歴史があるということなのだろうな。幕末。江戸最後の年、倒幕と尊王攘夷に揺れる隠岐島。明治維新の裏だ。世界初の自治政府を始めた井上甃介の50年にわたる奮闘、敗北、友の死、復讐、恋、そして罪。華やかな表舞台の維新だけが歴史ではない、ということを痛切に思う。個人的には、人物像も物語ももう少し突っ込んだ感じが好き。サラリとしすぎ。大河ドラマにいいかも。2013/07/11
ねんまに
6
明治維新前後の出来事にはだいぶ詳しくなってきたつもりだったが、この本に書かれていた隠岐島で起きた一連の出来事は全く知らなかった。知れば知るほど、維新のような大きな歴史の転換点にはその犠牲者もいたのだと実感する。丁寧な取材でこの事件をひもといてくれてありがたい2025/04/05
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