内容説明
容姿も、仕事も、家族も、生い立ちも、社会における立ち位置もバラバラの5人の女。彼女らの共通項は、35歳。夫あり。そして男性アイドルユニット「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであること。彼女たちの愛は、夫ではなくステージで輝く若く美しい「恋人」に遍く注がれる。哀れでも、歪んでいても、これはまぎれも無く、恋。だからこんなに愛おしい―。“最凶恋愛小説”。
著者等紹介
宮木あや子[ミヤギアヤコ]
1976年神奈川県生まれ。2006年「花宵道中」で第5回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞と読者賞をW受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エンブレムT
150
横に連なっていくというよりは、ドカンドカンと縦に重なっていくような感じの連作短編集でした。属するヒエラルキーがバラバラな35歳の女たち。それぞれに毒のある物語の主人公をつとめる彼女たちの共通点は、2.5次元にいる男性アイドルユニットの誰かをこよなく愛しているということ。そして、その唯一の共通点は、実は親よりも夫よりも自分の子供よりも近い存在として、彼女たち自身をつなげる特別な絆ともなりうる、という物語です。1話目を読了した時点からは想像すらしなかった、スカッと突き抜けたところへ連れて行かれる1冊でした。2014/04/24
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
135
35歳にして男性アイドルグループのとりことなった5人の女性の姿を描いた連作短編集。彼女らのハマりっぷりは、はたから見ると滑稽ですらあるのだが、アイドルを追いかけることで切実な問題から逃れようとする心情が真に迫り、この世の中の生きづらさ(特に女性にとっての)を感じさせられる話でもあった。それだけに、容姿も社会における立ち位置も異なる彼女たちが、互いにうらやんだりさげすんだりしながらもつながり合い、微笑ましい関係性を築いている感じに救われた思い。アイドルヲタを見る目が少し優しくなれたような気がする一冊だった。2014/12/19
いつでも母さん
123
宮木あや子恐るべし!『女』を描かせたらこの作家も巧い。なんてふり幅が広い作家なのだろう。もはやウダウダ言うまい。とにかく、なにかに夢中になれることは凄い。その何かは、人それぞれだ~(^^♪2016/02/25
lonesome
118
さすが宮木あや子。一話目を読んで夢も希望もねえ!って思ってしまったのは、地位も名誉も金もない自分は決して美佐代みたいな人に選ばれることがないから。でももしかしたらと思ったのに結局なんじゃそりゃってなったけど。「このクソセレブが。」とか、浮気のぼろを出す旦那の姿とか徐々に面白さが加速していくけれど、ちゃんと泣かせどころもあったし、最後五人が仲良くなるだけじゃなくてやっぱりちょっと辛辣なところもあって。別世界の話ではなく実は意外と身近な話で重ねて読んでしまった。2014/01/10
utinopoti27
112
登場するのは、容姿も境遇も所属するヒエラルキーが全く異なる5人の女性。共通点は35歳という年齢とジャリタレ「スノーホワイツ」の熱狂的ファンであることのみ。身近な現実には期待もせず希望も持たず、ただひたすら推しメンに入れあげる中年女たちには、正直言って何の共感もできません。ですが、読み進めるうちに、何の見返りもない一方的な恋に、ここまで純粋になれるオバサンたちがちょっぴり羨ましく思えてきたりして。現実なんてしょせんは妥協の積み重ね、妄想の世界に真実を見つけた気になるのも悪くないかもよ。2017/12/01