内容説明
幼い頃に母を亡くし、父が再婚した継母とうまくいかず不登校になった岸本聡里。愛犬だけが心の支えだった聡里は、祖母に引き取られペットたちと暮らすうち、獣医師を志すように。北農大学獣医学類に入学すると、慣れない寮生活が始まった。面倒見のよい先輩、気難しいルームメイト、志をともにする同級生らに囲まれ、学業や動物病院でのアルバイトに奮闘する日々。伴侶動物の専門医を目指していた聡里だが、馬や牛など経済動物の医師のあり方を目の当たりにし、「生きること」について考えさせられることに―北海道の地で、自らの人生を変えてゆく少女の姿を描いた感動作!
著者等紹介
藤岡陽子[フジオカヨウコ]
1971年、京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。新聞社勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。慈恵看護専門学校卒業。2009年『いつまでも白い羽根』(光文社)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
548
動物を愛するすべての方に読んで欲しい感動の物語です。今年2023年で作家歴14年になられる著者の藤岡陽子さんは私にとっては初読み作家さんでした。本書は自信を持ってお奨めできる素晴らしい一冊ですので、ぜひ多くの方に読んで頂いて著者がブレイクすればいいなと願いますね。ヒロインの聡里は不幸な少女時代を優しい祖母のチドリと愛犬パールに支えられ獣医師になる道を目指して北海道の獣医学大学に進学し次第に自信を得て数々の苦難にぶつかりながらも懸命に乗り越えて一歩ずつ成長していくのです。本書は涙なしには読めない感動作です。2023/08/13
Karl Heintz Schneider
324
動物を通して成長してゆく、ひとりの少女の物語。幼いころに母親と死別し、父親の再婚相手とソリが合わず引きこもりになってしまった聡里(さとり)。その後祖母に引き取られ、彼女の強い勧めもあり猛勉強の末、北海道の獣医学大学へ進学。周りの人たちの温かい心遣いと動物のぬくもりに触れるうちに聡里は徐々に自分を取り戻してゆく。これぞまさに藤岡ワールド!最初から最後まで温かい空気が溢れる物語だった。「けものみち」と言う言葉から険しい人生を送る話かと思ったが読んでいると全くそうは感じなかった。2023/09/07
ムーミン
311
人は何によって成長していくのか。何によって自分らしさが形づくられ、磨かれていくのか。聡里を取り巻く人々と彼女の経験を通して描かれるエピソードから考えさせられました。ニーチェの「事実はない。あるのは解釈」ではないが、自分に起こる現実をどう受け止めるのか、柔軟かつ前向きに解釈できる力を引き出してくれる人に出会える自分でありたいと思いました。2024/03/01
hirokun
284
星5 引きこもりの少女の成長物語。北海道の雄大な景色が目の前に浮かんでくるような感じ。私も学生の一時期寮に入っていたことがあったが、最初はその中の人間関係に戸惑いいろいろ苦労したことを思い出しながら読み進めていった。少女の祖母の前向きに考える姿勢は、本当に羨ましく思う。私などは、ついついマイナス思考に陥りがちであり、今もその罠からなかなか抜け出すことはできず、60歳半ばを過ぎて今も大きな課題だ。このような作品を読むことによって、気持ちが少しでも前向きになれることを期待したい。2023/08/20
trazom
269
藤岡さんの小説は「おしょりん」「手のひらの音符」に続いて三冊目。いつも、哀しさや寂しさを背負いながら健気に生きる登場人物の姿が心に染みる。人間の善性を掬い取った清らかさに満ちた藤岡ワールドだが、そこに凛とした強い意思が貫かれている。本書は、獣医学を学ぶ学生が主人公。獣医師という職業もまた、動物への愛情だけでは済まない厳しい世界である。産業動物の繁殖の厳しさ、伴侶動物診療における飼い主との人間関係などに戸惑いながら、人と人、人と動物との関わりを通じて成長する女子獣医学生の姿に、心からエールを送りたくなる。2024/01/14