出版社内容情報
1939年6月、上海。駐日アメリカ公使ピアースとの第一回目の合議が始まるも…。知られざる日中和平工作の歴史に光を当てた傑作巨編。
内容説明
一九三九年、上海。蒋介石と和平交渉にあたってきた工作機関の責任者・小野寺信陸軍中佐は、別ルートで中国と交渉を行っていた影佐禎昭陸軍大佐からの抗議によって、その道を絶たれてしまう。失意の小野寺から交渉を引き継いだのは、盧溝橋事件で停戦交渉に尽力した今井武夫陸軍大佐だった。小野寺の工作に関わってきた民間人の倉地スミや生物学者の森塚たちは、今井大佐から、これから行う和平交渉を手伝ってほしいと頼まれる。それは蒋介石に繋がる人脈の中から協力者を探すことと、和平の密書を届けるというものだった―。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県出身。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞しデビュー。’10年に発表した『華竜の宮』が、『SFが読みたい!2011年版』のベストSF2010において国内篇第1位となり、’11年には第32回日本SF大賞を受賞している。さらに’16年刊行の『夢みる葦笛』が『SFが読みたい!2017年版』のベストSF2016において、二度目の国内篇第1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
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starbro
223
直木賞候補作、『破壊の王』に続いて、上田 早夕里、2作目です。開戦前夜の和平交渉の物語、歴史ノンフィクションのような雰囲気でした。本書の時代は、船戸与一の『満州国演義』や浅田次郎の「蒼穹の昴」シリーズ等で描かれていますが、それらの秀作と比べると、どうしても見劣りしてしまいます。 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334913823 3月は、本書で読了です。2021/03/31
のぶ
93
上田さんの作品を初めて読んだ。今までSF作家というイメージがあり敬遠していたためだが、タイトルを見て読んでみたくなった。骨太で重厚な物語だった。日中戦争の和平工作を描いた話だが、あまりこの戦争について知る事がなく、興味深く読ませてもらった。自分はスパイ小説が苦手なので、その部分については分かり難い部分もあったが、良くできた本だと思った。主人公にあたる今井武夫は実在の人物のようで、史実として日中戦争の和平は実現しなかったが、獅子奮迅の活躍で、政治の世界で戦争を終わらせることの難しさを感じさせられた。2021/02/08
Aki
31
満州事変から日華事変最中の上海租界を舞台に、日中和平工作に奔走する人々を描く。戦時中の異国で文化対立や差別もある中でも、悲壮感ではなく朗らかに凛として生きていく姿が清々しく描かれる。対日中だけでなく欧米列強の思惑にも翻弄され結局は濁流の如く戦下へなだれ込むまでの、いくつもあったであろう実を結ばなかった和平工作。ラストに仄めかされているように、数十年後に花開くと信じて今出来ること精一杯行うことの気高さが印象に残った。圧倒的な世界観のSFジャンルから、全く別の面を見せてくれる筆者、さて次作は如何に?2021/06/22
RIN
30
SF出身の上田さんの近代歴史小説。何となくよく知らない日中事変後の和平工作がテーマ。現代に生きる我々は、太平洋戦争で戦争回避ができなかったのか?とか一刻も早く終戦に持ち込むことはできなかったとか簡単に言ってしまうが、紛争の処理とは当事国二国間の合意があってもうまく行かず、各々の国内情勢は勿論のこと、仲介と国益を御旗に介入してくる列強各国の思惑が強く反映してすんなりとはいかないものだと痛感。二段組300頁超で内容も濃い大作。結局、どちらに非があったとしても他国の領土に踏み入った方が社会的敗北というのが戦争。2022/04/12
紫の煙
20
太平洋戦争前の中国で、民間人ながら日中和平工作に命懸けで従事した人たちがいたのに、最悪の結果になったのが、歴史の事実。史実に沿いながらも、架空の人物でストーリーを膨らませ、とても面白かった。二段組で、なかなか手強かった。2021/12/29
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