出版社内容情報
日本では実は戦後の文化である個人のお誕生日会。その有様から生まれた意味、生きる意味を考えさせる全7篇の短編集。
内容説明
“お誕生会が禁止された小学校”“姪っ子にサプライズで企画したお誕生会”“母が台無しにしたお誕生会”“お誕生会好きの会社の上司”“クラスメイトの中国人のお誕生会”“3.11に祝うお誕生会”“認知症の母が祝ってくれた誕生日”あなたのお誕生会には、どんな思いが詰まっていましたか。大人気「マカン・マラン」シリーズの著者が描く、生まれてきたことを自分で認めてあげたくなる全七編。
著者等紹介
古内一絵[フルウチカズエ]
1966年、東京都生まれ。日本大学藝術学部映画学科卒。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年にデビュー。’17年『フラダン』(小峰書店)で第六回JBBY賞・文学作品の部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ウッディ
317
クラスの友達を招いて開かれる「お誕生会」が禁止になった。親の見栄や誰を呼ぶか問題等々、賛否分かれる行事だが、誰もが一年に一度主役になれ、自分がこの世に生を受けたことを祝ってくれる大切な日、そんな誕生日にまつわる連作短編集。悩みを抱える主人公たちが誕生日の思い出や出来事を通じて悩みを解決し、優しい気持ちになれる。3.11に生まれた双子、認知症の母が憶えてくれていた桜のケーキ、心の襞にじんわりと染み入るようなストーリーに胸と目頭が熱くなり、物語のわき役が、次の話では主人公になっているという構成も面白かった。2021/03/09
美紀ちゃん
312
お誕生日に関する6つの短編集。 実際には、クラスの友達を呼ぶお誕生会は今でも行われているのだろうか? 私も小学生の時には、呼んだり呼ばれたりしたことがあった。 その時のことを思い出す。 お誕生会を通じて、家族の在り方も見えてくる内容。 万華鏡のお母さんだけ留守番は、本当にかわいそう。ありえない。 刻の花びらは、泣きそうになった。2021/09/06
けんとまん1007
265
お誕生会を巡るものがたり集。それでいて、全体が一つを、いろんな角度から描いていて、統一感もある。生まれること、命の不思議さがありながら、必ずしも、思い描くような場ばかりではない。でも、そこには、希望がある。2020/12/15
のぶ
221
お誕生会をモチーフにした7つの短編集。お誕生会と聞くとおめでたいイメージがあるが、本作はお誕生会を物語の中心に扱わずに、それを取り巻くいろいろな人間模様が描かれていた。舞台は学校、職場、家庭等、様々な場所で、登場人物は緩く繋がっている。お誕生会を禁止した学校の話は何か寂しいが、読んでみると納得させられる。他にも母がお誕生会を台無しにした話。震災の3.11に祝う話。認知症の母が祝ってくれた誕生日。どれも身につまされるが、古内さんはとてもうまく人物を書き分けていた。苦い中にも甘いものの混じっている作品集。2020/10/18
ごみごみ
189
「お誕生会」にまつわる7つの連作短編集。実際に学校で禁止されているところもあるのだろうか?子供の頃、何度か呼ばれた記憶はあるが、自分自身は開いてもらったことはなかった。誰を呼ぶか、呼ばないか、プレゼントは、料理は、お返しは?確かにいろいろ面倒ではありそう。誕生日に苦い思い出があるそれぞれの主人公が、少し前向きになれたのがよかった。大震災の記憶、介護の問題、そしてコロナ禍の今も描かれていて共感できるところも多い。ラスト4行に励まされる人たちもたくさんいるんじゃないかな。2020/11/14