内容説明
おまえは誰だ。何者だ。埼玉一家惨殺事件。その少年死刑囚の、脱獄488日を追う!!それは、懺悔か復讐なのか。横溝正史ミステリ大賞出身作家が挑む、社会の歪みに隠された真実。
著者等紹介
染井為人[ソメイタメヒト]
1983年千葉県生まれ。芸能プロダクションにて、マネージャーや舞台などのプロデューサーを務める。2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
441
★★★★★★★★★★映像化が決定した染井為人の長編。一家惨殺の罪で死刑判決を受けた青年・鏑木。隙を突いて脱獄し、劣悪な工事現場や住み込み旅館などへの潜伏を続ける彼が行き着いた先に待ち受けるものとは…。心に傷を負う者たちを語り手に、まるで短編集のように物語は展開していく。そこに共通する心優しき長身の青年の存在。読者は誰しも彼の人間性に魅せられるのだろう。それだけにラストは賛否が分かれそうだが、社会派としての問題提起と重厚な余韻を残すためにはこの結末しかなかったと思う。各章のタイトルも含め、センスが光る傑作。2022/03/01
nobby
369
埼玉一家3人惨殺した少年死刑囚が脱獄、その一年半ばかりの逃亡劇を一気に読まされた。介護施設・工事現場・スキー旅館など5ヶ所での潜伏模様が各章毎に描かれる。謎多き存在ながら真摯で利発的な言動に、関わる人達が次々と惹かれていく。その一方で徐々に凶悪犯なのかと勘づき疑いながら、目の前の姿と重ならないのがやるせない…少し時系列ズラした章構成の中で、グループホームを主舞台とする設定が上手い!終盤で明かされる真相に特に捻りや驚愕のないことで呼び起こされる警察や司法への憤りや哀愁…涙と連なる叫びが彼に届いたと信じたい…2020/03/14
ウッディ
354
一家三人を殺害し、未成年ながら死刑判決後に脱走した鏑木慶一。土木作業員、スキー宿従業員そして介護職員など職を変えながら逃亡を続ける彼の同僚たちは、頭がよく、誠実で思いやりのある彼の人柄に触れ、「殺人をするような人間ではない」と口を揃える。事件の真相とは?息を潜め、周囲と関わらない潜伏生活にドキドキしながら、慶一を応援している自分に気付く。自分が触れ合った誠実な彼と逃亡する殺人犯としての彼のどちらを信じるのか、薬丸岳さんの「友罪」と近いテーマに冤罪という要素を加えた物語で一気読みでした。とっても面白かった。2020/07/13
OSOGON15
323
初読み作家さんです。一家惨殺事件の少年死刑囚が脱獄する。主人公の鏑木慶一。名前や容姿を変え、転々とした潜伏と逃亡を繰り返す。脱獄から488日間の生活。残虐な手口とはあまりにも乖離したもので、凶悪犯であるはずなのに、思わず逃げ切ってほしいと願っている。信実は・・彼のあまりにも過酷で理不尽な運命に胸が締め付けられ涙が止まりませんでした。最後は未来に希望が感じられ少し救われた気分でした。2023/04/02
yumimiy
310
やっと読みたい本が届き実に嬉しい。しかも想像を超える感動を得られ今、まさに余韻に浸る至福の時。君は何者?私の正体は・・・脱獄逃亡者。逃亡といえばH・フォードの映画「逃亡者」がすぐ浮かぶほど面白かった。R・キンブルの職業は医師だったが、本書の主人公は養護施設出身の鏑木慶一。ある時は飯場労働者、ライター、介護職員、旅館の住み込み、パン工場のラインなど場所場所で人と触れ合い助け、助けられるオムニバス形式。何故、鏑木慶一は脱獄し逃亡者になったのか、それは内緒。だが、ラストは切なさを通り越し悔し哀し。染井氏いいね。2020/05/28