内容説明
「四番隊隊長、松原忠司に切腹を申し付ける」新選組副長・土方歳三はこう断罪した。鉄鉢巻をつけて大薙刀を携える様から「今弁慶」と称された松原忠司。潔く自刃しようとした瞬間、意識が途切れる―そして、目が覚めると、そこは源義経の生きる世界だった。歴史の動乱に巻き込まれた不器用な松原の生きざまを骨太に描いた、著者の光文社文庫初の書下ろし作品!
著者等紹介
篠綾子[シノアヤコ]
第4回健友館文学賞受賞作『春の夜の夢のごとく 新平家公達草紙』でデビュー。短編「虚空の花」で第12回九州さが大衆文学賞佳作入選。おもな著書に、『青山に在り』(新生第一回日本歴史時代作家協会賞作品賞受賞)、『蒼龍の星』『酔芙蓉』『天穹の船』、主なシリーズに「更紗屋おりん雛形帖」(第6回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞受賞)、「江戸菓子舗照月堂」「小烏神社奇譚」「万葉集歌解き譚」「木挽町芝居茶屋事件帖」など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えみ
53
これから起こることを知っていようとも、何も怖がることはないのだ。ということを命懸けで教えてくれた男は「今弁慶」と呼ばれていた元新選組隊士・松原忠司である。新選組隊士と聞き一体どれだけの人が彼の名をあげられることができるだろうか。そんな彼が土方歳三に切腹を言い渡されたのは慶応元年。自刃しようと短刀で腹を突き刺したところで、時代は遡り680年前の鎌倉時代へ。時空を超えた今弁慶・忠司と正真正銘本物の弁慶が相まみえる。幕末の志士が鎌倉の戦へ…。現在から見ればどちらも過去で歴史だが、繋がる想いと生き様と血統に感動。2023/04/02
ワッピー
30
初読みの作家さん。薩摩藩の奥女中に機密を漏らした疑いで切腹を申し渡された新撰組四番隊長・松原忠司が気がついたとき、そこは700年前の源平合戦まっただ中。松原はその後に起きることを知りつつ、盟友となった畠山重忠・惟宗三郎とともに平家の公達・副将丸を助けることに。信義を重んじ潔く戦う武士たちとの理想とは裏腹に、醜い権力闘争の罠の中で追い詰められていく義経に後世の自分の姿を重ね、自分の想いを実現するために、今弁慶と称された松原はリアル弁慶と決闘を約する。タイムスリップ時代小説の新機軸を楽しみました。⇒2024/07/15
みこ
24
新選組の今弁慶こと松原忠司が弁慶のいる源平合戦時代にタイムスリップする話。現代人が過去に飛んで龍馬や信長に会ったり、彼らが現代にやってくる話は幾つもあるが、歴史上の人物がさらに過去に飛ぶという斬新さに(解説によると漫画作品では既に存在しているらしい)惹かれて面白く読めた。序盤で近藤土方よりも格下の松原が島津久光と意気投合するやや強引な伏線以外は歴史の流れを崩さない構成も見事。しかし、松原忠司でさえ主人公になってしまう新選組というコンテンツに改めて無限の可能性を感じる。2023/04/26
Y.yamabuki
16
「今弁慶」こと新選組 の松原忠司は、切腹を申し付けられるが、その瞬間、本物の弁慶のいる時代にタイムスリップしてしまう。彼は、誠実で、友情に厚く、潔い好人物。幼い平家の御曹司との仲も好ましく、楽しく読める場面も多い。けれど、せっかくユニークな設定なのでもう少し読み応えがあっても良かったのではと思う。「弁慶」繋がりだけでこの時代に?そして彼の江戸での罪は晴れないの?この辺りが気になってしまった。まさか、続編で元の時代に戻るとか?あったら面白そう。2023/06/10
エル
7
タイムスリップしたのは新撰組の松原忠司。タイムスリップ先はまさかの源平時代。松原忠司も鎌倉のあの時代のこともよく分かってないけど、タイムスリップ物として主人公がどうなるか、後の歴史が変わるかが気になり一気読み。過去に行くことで歴史を捻じ曲げ、未来を知っているからこそ、それを告げるか悩む忠司のなんと人間くさいことか。ってかなんのために過去に飛ばされたの??2023/06/07