出版社内容情報
『二十年目の桜疎水』で第八回京都本大賞を受賞した著者による、『京都一乗寺 美しい書店のある街で』に続く京都ミステリー短編集!
内容説明
川端康成、中原中也、尹東柱―京都と縁のある文学を題材に、不思議な出会いに翻弄される人々を描く。不良少年の東住、彼の名前の由来は戦時中独立運動の疑いで投獄された尹東柱だった…。(「東柱(ドンジュ)と東柱(とうちゅう)」)大学生の秀文は、曽祖父と笑顔で写真に写る謎の女性の姪孫を訪ねた…。(「『土曜日』のフランソア喫茶室」)第八回京都本大賞受賞の著者が紡ぐ、新たな京都ミステリ四編。
著者等紹介
大石直紀[オオイシナオキ]
1958年静岡県生まれ。’98年第2回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した『パレスチナから来た少女』でデビュー。2003年『テロリストが夢見た桜』で第3回小学館文庫小説賞、’06年『オブリビオン―忘却』で第26回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞、’16年『二十年目の桜疎水』収録の「おばあちゃんといっしょ」で第69回日本推理作家協会賞短編部門、’20年『二十年目の桜疎水』で第8回京都本大賞を受賞。TVや映画のノベライズも多数手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シナモン
108
とても良かったです。過去と現在をつなぐどこか謎めいたストーリー展開。京都の雰囲気も存分に感じられました。2023/07/07
いたろう
74
京都を舞台に、文学をテーマにした4編の短編集。有名どころでは、川端康成「雪国」、中原中也。中也が一時住んだ、「スペイン風の窓」と呼んだ窓がある大正時代の家が、今でも京都に残っているらしい。その昔、京都で学生時代を過ごしたが、当時、その家のことは、全然知らなかった。そして、戦時中に同志社大学で学んだという韓国人の詩人、尹東柱(ユンドンジュ)、文学ではないが、戦前の京都で発行されていたという反ファシズム紙「土曜日」のことは、今回初めて知った。昭和初期からあるというフランソワ喫茶室には、今度、是非行ってみたい。2022/04/29
えも
29
京都の文学作品を題材にした、風情のある短編集▼わが故郷は日の光 蝉の小河にうはぬるみ、…かなたへ 君といざかへらまし▼かつて暮らしたみやこへの、そんな望郷の念に駆られる作品でした。2022/08/21
Y.yamabuki
18
京都に関わりのある作品をモチーフにした短編集。ミステリーというより人間ドラマと言った方が良さそう。新しいストーリーが、元の作品と京都の町に程よく溶け込み、雰囲気を壊さない静かで優しい物語。一話目の「東柱と東柱」過去と現在が交差する見事な一編。東柱の詩が二編、初めて読んだ。静かで儚げで美しい詩。切ないけれど素敵なお話。ラストは明るい兆しも見えて一安心。好きな小説「古都」をモチーフにした現代の姉妹の話も面白かった。堅苦しくなく、文章は読み易い。元の作品を知る切っ掛けにも。期待以上でした。2022/06/20
えつ
11
尹東柱、川端康成、中原中也…と京都と縁のある文学作品をベースにした4篇からなる短編集。フィクションなんだけど、ノンフィクションかのような作品たち。京都をよく知る人ならより楽しめるんじゃないかなって思う作品。 なんかどれも現在と過去が交差していて、どうなるんだろう?と思いながら、ラストの結末にじーんとして読了でした。優しいミステリって感じ。フランソワ喫茶室、行ってみたいな。2024/08/21