出版社内容情報
イノシシの万次郎の夢は、カフェを開くこと。画家志望のエリは、万次郎の絵本を出版することを思いつく。全6編を収めた短編集。
内容説明
動物園の片隅で、ひっそり地味に生きる老いたイノシシ・万次郎の密かな夢は、いつかカフェを開くことだった。幼いころから万次郎の絵を描き続ける画家志望、しかし才能はないエリは、万次郎を主人公にした絵本を描くことを思い付くが…。笑って泣けて、また笑える表題作「万次郎茶屋」を始め、ちょっと不思議で、じんわりしみる全6編を収めた珠玉の短編集。
著者等紹介
中島たい子[ナカジマタイコ]
1969年東京都生まれ。多摩美術大学卒業。放送作家、脚本家を経て、2004年「漢方小説」で第28回すばる文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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エドワード
27
何ともかわいい表題作。動物園の脇役、イノシシの万次郎の夢はカフェを開くこと。そして幼い頃から万次郎の絵を描くことが大好きなエリは、万次郎の絵本を作ることを思いつく。しかしエリは致命的に絵がヘタだ。そんなある日、突然万次郎の檻に大勢の人が押しかける…。お話自体が絵本のようで、子供に読み聞かせたいね。地球人と異星人が共存する「私を変えた男」、パイロットと妻の結婚生活を描く「初夜」など、SF感が懐かしいお話が続く。「80パーマン」はコミカルタッチで生きる姿勢を考えさせる話だ。藤子不二雄さんとは無関係でした!2023/11/03
マツユキ
15
動物園の年老いたイノシシ万次郎と、子供の頃から万次郎と絵が好きなエリの物語。喫茶店も絵本も素敵な夢なんだけど、現実は…。表題作以外は、西暦が終わる日を共に過ごす親友を探す男に、宇宙船パイロットの妻に、恋愛できない男に、家でも仕事でも80%の男に、別れた夫の再婚に動揺する女。説不器用な生き方や人間関係の中の幸せを再確認できる、笑えて、温かな作品でした。説教臭さも微笑ましいです。それでも、恋愛はうまくいかない。『80パーマン』が特に好きでした。2025/04/11
ひねもすのたり
10
個人的にもっとブレイクしてもいいだろう作家ランキング第3位ぐらいの中島たい子さんの短篇集。SFファンタジーっぽい味つけの六篇を収めます。 平易な文章で綴られて読者を選びませんが、一方で小説としてのたしかな旨味を堪能できます。軽妙洒脱という言葉がぴったりな作品集でした。 何作か選ぶなら、動物園の片隅でひっそり生きるイノシシの問わず語りが最高にイイ表題作と中途半端な正義の味方『80パーマン』がすごく好きです。 万次郎は『しろくまカフェ』にゲスト出演させてあげたい♪★4.52022/06/02
まめの助
4
★★★★☆幸せについてや、よく生きる事に気付いた人たちの短編集。SFファンタジーというのだろうか、異星人やイノシシが、人間に大切な事が何かに気付くきっかけをくれる。長い付き合いになり、相手を思いやる気持ちを忘れていた自分に必要な本が立て続けに巡って来て、自省するばかり。皮肉が効いてるのに温かくて、ユーモアたっぷりで、さすがです!2022/07/24
ジャ読メヴュ
2
漢方小説以来の読書、うーん、読書讃歌、絵本讃歌だね。不思議な余韻がいいね、最後の私を変えた男は二度読んだ。表題作もいい。「好きになったところ」が「自分と合わない嫌なところ」に、すべてひっくりかえっただけ232p2022/12/17