内容説明
推理作家の恋住木美子は、作品数も収入も知名度も低いが、能書だけはまくし立て、おまけに酒乱ときては敬遠する編集者も多い。だが、そんな彼女にテレビ局から、現代ミステリーについて一席という出演依頼があり、それが大変なことに…自身をパロディ化した「木美子の冒険」をはじめ、ファンタジーやハードボイルドなど、文庫初収録を含む傑作短編集!
著者等紹介
小泉喜美子[コイズミキミコ]
1934年東京築地生まれ。都立三田高校卒業後、英字新聞ジャパンタイムズ社に勤務。’59年「我が盲目の君(のちに「夜のジャスミン」と改題)」がエラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン誌の第一回短編コンテストに入選。’63年に長編第一作の『弁護側の証人』(文藝春秋)を発表。その後、10年のブランクを経て、’73年に『ダイナマイト円舞曲』(光文社カッパ・ノベルス)で文壇にカムバックする。海外ミステリーと歌舞伎に精通し、小説同様、評論、エッセイも数多い。翻訳者としても著名。’85年に51歳で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cinos
46
洒落た都会派というイメージがある小泉喜美子さんの文庫初収録を含む短編集。「木美子の冒険」は作者を彷彿させるミステリ作家テレビに出ることになる話で、他にも実在の作家を思わせる登場人物が出てきます。「ぼくと遊ぼう」の本好きの孤独な少年と外国人の兄妹が交流する話がよかったです。2021/02/26
geshi
31
都会的な空気感や海外の話を書いても違和感のない文章が本当にうまい。そういった雰囲気づくりをしてミステリーという幻想を現実のものにすることが作者にとって一番重要だったのだろう。〈怪盗〉が追い込まれるサスペンス場面が読ませるからオチのひっくり返しに活きてくる『ばらばら』、少年時代の短くもきらびやかな明と全てが無くなってしまった後の暗の対比が美しい『ぼくと遊ぼう』、彼の不器用なままならなさが悲しく子供が見せる純粋さがまぶしく映る哀切の『日曜日は天国』あたりが好みだった。2022/09/21
タカギ
23
10編の短編集。文庫初収録のものが多いらしい。著者自身をパロディした「木美子の冒険」が面白かった。戸板康二、眉村卓、森茉莉と思われる名前も出てくる。他には「初心者の幸運」「ばらばら」「生まれながらの悪女」が好き。「船路の果てに」は、著者は案外、こういう“恵まれた人はずっと恵まれたまま”で、勧善懲悪みたいな話(べつに悪人ではないけど)にはしないよな、と思った。文庫のタイトルについては載っていないんだけど、編集者がつけたのかな?2021/01/26
山猫
18
バブル期にミステリーの女王と呼ばれた人がいた。が、彼女が逆立ちしたって到達し得ない領域に小泉喜美子という作家は高度経済成長期から住んでいた。女王様はどんなに頑張っても田舎くさかった。どうあがいても垢抜けないままだった。だが、小泉喜美子はどんなに悲惨な話を書いても、どこか都会的でお洒落で粋だったのは、その底の部分に軽妙洒脱さが流れていたからなのだろう。その稀有な味わいに気づいたのは、ミステリー作家・小泉喜美子がもう2度と作品を発表できなくなってからだった。2021/02/08
かえなつ
7
1970年代後半から80年代前半にかけて書かれた、ミステリー短編集。女性2人の船旅の話『船路の果てに』の、終わり方がまさにミステリー。他にもユーモアも含んだ『ばらばら』、保護施設めぐる『うまれながらの悪女』が印象に残りました。2020/11/23
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