内容説明
誰かの死の謎を解き明かすより、生きている誰かのために捜査をしたい―。練馬署の女性刑事・魚住久江が、古巣の警視庁捜査一課からの誘いを断り続けている理由だ。女子大生が暴漢に襲われ、捜査線上には彼女と関係のあった複数の男性の存在が浮上する。久江が一枚のハンカチから突き止める意外な真相とは?(表題作)未収録短編を加えた決定版!
著者等紹介
誉田哲也[ホンダテツヤ]
1969年、東京都生まれ。学習院大学卒。2002年、『妖(あやかし)の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞。’03年には、『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
126
★★★★★★★★☆☆人情味溢れる女性刑事・魚住久江シリーズ第1弾。元警視庁捜査一課でありながら「殺し」の捜査より「生きている人間のため」の捜査に魅力を感じる所轄刑事・久江。姫川シリーズの主人公・玲子とは異なる信念を持つ彼女は、聞き取りや取調べを通じて被害者や被疑者がついた〝嘘〟を解き明かしていく。捜査一課が動かない事件ばかりのため派手さに欠ける感は否めないが、収録された7編とも捜査を進める中で見えてくる真相には意外性があり、特に久江が「人に頼ることの大切さ」を説く『弱さゆえ』が良かった。白誉田の警察小説。2021/12/29
アーちゃん
55
2011年単行本、2014年新潮文庫、2020年光文社文庫。6編の短編に2014年発表「弱さゆえ」を加えた7編。姫川玲子シリーズと違い、あえて所轄勤務の刑事を選んだ魚住久江。練馬北警察署強行犯係のメンバーはマル暴上がりのベテランに万馬券を当てたという同僚刑事や十歳年下の後輩刑事。被疑者への取り調べから事件の裏を描くという内容は地味だけど久江の目線が温かく読後感が良かった。2024/08/13
mayu
55
魚住久江シリーズ①。姫川班に合流するかもということで気になり、こちらのシリーズも読んでみることに。短編集。失われるべきでない命が当たり前に生きていけるような仕事がしたいという信念に基づき、本庁ではなく所轄にこだわる。穏やかに見えつつも、芯の部分では熱い思いを持っている。自由に飄々と振る舞いながらも、内面には寂しさや弱さも抱えている。姫川とはまた違うタイプの刑事だが、魅力のある人だと思う。そんな人だから、被害者にも、加害者にさえ、寄り添うような言葉をかけられるんだろう。長編も楽しみ。2024/05/21
まっと
33
誰かが殺されて始まる捜査よりも、生きるべき人が昨日と変わらない今日を迎えられるお手伝いとなる捜査をーかつて警視庁捜査1課でならした練馬署の女性刑事魚住久江。殺人捜査に感じた虚しさから捜査1課復帰の誘いを断り続けて強行班での捜査の道を歩む。そんな彼女の真摯な姿勢が感じられる全7編の短編集。加害者・被害者に寄添う包容力が底辺に感じられ、姫川玲子シリーズとはまた違った魅力を放つ。「愛したのが百年目」「弱さゆえ」がよかったが、「弱さゆえ」での魚住の語りが刺さった。そんな魚住の背中を見て育つ峰岸の将来も楽しみ。2023/03/13
ぺぎら
33
誉田哲也、女刑事とくれば姫川玲子ですが、玲子とかはまた違った刑事像がよかった。短編集で読みやすく、魚住久江の矜恃が染みた。『生きるべき人が、失われてはならない命が、当たり前のように生きてられる、昨日と変わらない今日を迎えられる、そういうことのお手伝いがしたい。そういう仕事が、したいです』犯罪を未然に防ぐことは、ほとんどできないとわかりつつこの矜恃、信念を持ってる久江がすごくカッコ良かった!!!2020/06/07