出版社内容情報
総合病院の看護師が戦時中のマニラにワープ? 戦争について、命について、あらためて深く問いかける感動作!
内容説明
夜勤中に地震に見舞われ意識を失った看護師の紗穂。気がつくとそこは一九四四年のマニラで、さっきまで病室にいた老女の若き日の姿になっていた!困惑を抱えたまま、従軍看護婦として戦争に巻き込まれる紗穂。それでも、持ち前の明るさで数々の理不尽に抗いながら、過酷な日々を駆け抜けていく。反戦の意志と、命を背負った女たちのかけがえのない青春が紡ぐ圧倒的感動作。
著者等紹介
藤岡陽子[フジオカヨウコ]
1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大留学。慈恵看護専門学校卒業。2006年「結い言」が宮本輝氏選考の北日本文学賞の選奨を受ける。’09年、看護学校で舞台の長編小説『いつまでも白い羽根』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
137
現代の看護師が、大東亜戦争後半のフィリピンの看護師と入れ替わる。戦局が悪化するにつれて重傷の患者も増える。マニラから移動を余儀なくされ、過酷な運命に翻弄される看護師達。倒れ行く仲間、発作的に自決を図る仲間。日本への帰還も夢のまた夢のように感じる。それでも彼女達は歩む。戦局が、未来が、運命が、晴れればいいと歌いながら、願いながら。我が国は大東亜戦争の敗戦以来、幸いに戦火を免れている。生きづらさや、様々な悩みや苦しみはある。それでも、戦火の過酷な状況に比べれば遥かに恵まれている。平和の尊さを忘れてはならない。2020/08/17
おしゃべりメガネ
103
9年ぶりの再読です。8月のお盆が近づいてきたこの時期、やっぱり戦時関連の作品を手にとってしまいますね。都内のとある病院に看護士として勤務する「紗穂」は意識のない高齢の女性患者「雪野サエ」の健診中、大きな地震に見舞われます。目が覚めると、そこは1944年の戦時中マニラで、なんと「紗穂」は「雪野サエ」と入れ替わってしまってました。ただの反戦作品ではなく、看護士としての使命感はもちろん、命の尊さがしっかりと綴られています。戦時下においてまっすぐ健気に生きようとする彼女達の姿に涙が溢れます。平和って大切ですね。2024/08/05
Shinji
98
お気に入りの作家の藤岡陽子さん。これまで読んだ作品は、ほぼ現代ものでしたが今回は現代を基準にした戦争舞台のSFタイムスリップもの。感想は率直に良かったです。ストーリー的には少々荒い感もしますが、そこはさすが藤岡さんというメッセージ色が散りばめられていましたね!私自身、戦争を体験したわけではないので当事を生きた方の価値観はわかりにくい部分はありますが、この作品では生命を守る目線からの『反戦』がありました!もう少しで時代の変わる「ヘイセイ」の住民ではありますが当事者が築いてくれた晴れを守っていきたいですね。2018/07/16
aoringo
92
現代の看護師が太平洋戦争中のマニラにタイムスリップしてしまう。その地で従軍看護婦として働くことになるが、戦争末期の悲惨な状況下でドリカムを歌う主人公。自分のために生きるんだとみんなを奮い立たせる。次に生まれ変わるなら君の言うヘイセイという国に生まれたい。思わず涙ぐんだけど、その言葉に恥じない日本になっているのかな。一気読みの感動作でした。2019/11/15
修一朗
87
ドラマを先に観てからの原作読み。現代に働く看護師が戦時中のフィリピンにタイムスリップして従軍看護婦として働く姿を鮮明に描く,シンプルな構成だけれどもこれが強烈なメッセージ性を帯びるのだ。特にお国のために犠牲になろうとしている人たちに異を唱え,”自決なんてとんでもない,生きて愛する家族に再会することこそが大事なんだ”という強い気持ちが素晴らしい。ドラマはキャストがよかった。永野芽郁,芳根京子もちろんだけれども,菅野婦長の江口のり子がぴったり。ちなみに後日談までしっかり描いたドラマ版はよかったです。2025/05/13