内容説明
殺人傷害事件で服役していた真壁が出所した。だが、真壁が命がけで殺そうとした男・王は、藤野組と組む中国人組織のボスとなっていた。一方、高級車窃盗団を追う鮫島は、孤独な老人・大江と知り合う。大江に秘密の匂いを嗅いだ鮫島は、潜入した古家で意外な発見をした―。過去に縛られた様々な思いが、街を流れる時の中で交錯する。心に沁みるシリーズ第八弾。
著者等紹介
大沢在昌[オオサワアリマサ]
1956年名古屋市生まれ。’79年「感傷の街角」で小説推理新人賞を受賞しデビュー。’91年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、’94年『無間人形 新宿鮫4』で直木賞、2001年『心では重すぎる』、’02年『闇先案内人』と連続で日本冒険小説協会大賞、’04年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞、’06年『狼花 新宿鮫9』で日本冒険小説協会大賞、’10年に日本ミステリー文学大賞、’12年『絆回廊 新宿鮫10』で日本冒険小説協会大賞、’14年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
194
8巻は派手な事件はないので好みが分かれそうだが、歴史や地理を丁寧に紐解いて、シリーズで最も新宿の匂いが漂う。訳アリ老人・大江とヤクザ・真壁の二人を描きつつ、鮫島の生き方を問い詰めるハードボイルドでありながら、真壁とその女・雪絵とのラブ線を「演歌」のように彩り、晶と鮫島の関係さえも浮き彫りにする「愛の佳作」だと思う。前作で殆ど登場のなかった桃井、薮の登場が多いのも嬉しい。事件と人間が繋がり過ぎな感も若干あるが、それも「新宿だから」と思わされてしまう説得力もある。鮫島の矜持も鮮明になって、次巻の活躍も楽しみ♬2020/07/23
k5
76
春の警察小説祭りその①。初出が新聞連載だったこともあって、キッチュさが魅力のこのシリーズにしては、いたって真っ当なハードボイルド。あと中年になると美味しい街の歴史も楽しめて名作ですが、ちょっとエンジンがかかるのが遅いうらみはあります。シリーズの中でも会話の美しさは群を抜いているかもで、桃井の「むずかしいところにきたな」というような言葉遣いには痺れました。2022/04/03
タツ フカガワ
74
シリーズ8作目。高級車窃盗グループを追う鮫島は、中国マフィアの頭領の呉、副頭領の王を死傷させ服役していた藤野組の真壁(1作目『新宿鮫』)と出会い、出所していたことを知る。隣には当時から連れ添っていた雪絵がいた。だがいま藤野組は、その敵対していた中国マフィアの王と組み、大きな利益を得ていた。鮫島、王、そして雪絵の3つの視点で描かれる全編ヒリヒリするようなサスペンス。なかでも雪絵の母親が、娘も知らない秘密を告白して真壁にやくざから足を洗うよう懇願するシーンには泣けた。2025/02/27
kei302
63
シリーズ順番関係なく読破中。『絆回廊』は辛くて読めないけど…。第8弾は派手さがなくて、情の部分が濃い。大江老人、真壁、雪絵さんと母親、さり気なく登場しているのに影響大の深見。タイトルの風化水脈の意味が深い。あの井戸が! 最後に伏線回収の手法、大沢作品ではめずらしいかも。すっかり忘れてたので感動したよ。2022/11/24
鍵ちゃん
48
殺人事件で服役していた真壁が出所した。だが、真壁が命がけで殺そうとした男・王は、藤野組と組む中国人組織のボスとなっていた。一方、高級車窃盗団を追う鮫島は、孤独な老人・大江と知り合う。大江に秘密の匂いを嗅いだ鮫島は、潜入した古家で意外な発見をした。前半は新宿がどうとかとグタグタだったが、後半から一つ一つの事柄が結びつき一気に結末へ。誰が悪党かはわかりながら、取り巻く人達の思いが面白かった。今回は700頁超えにも関わらず殺人が少ない分、心に染みた内容でした。2022/09/07