内容説明
往年のトップスキーヤー緋田宏昌は、妻の死を機に驚くべきことを知る。一人娘の風美は彼の実の娘ではなかったのだ。苦悩しつつも愛情を注いだ娘は、彼をも凌ぐスキーヤーに成長した。そんな二人の前に才能と遺伝子の関係を研究する科学者が現れる。彼への協力を拒みつつ、娘の出生の秘密を探ろうとする緋田。そんな中、風美の大会出場を妨害する脅迫者が現れる―。
著者等紹介
東野圭吾[ヒガシノケイゴ]
1958年大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら’85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞受賞。’99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞受賞。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
631
タイトルの意味は読書開始早々にわかる。そして、主人公の宏昌が抱えるこの葛藤が、物語を最初から最後まで貫流する中心葛藤となって支配することになる。最初からすべての条件が開示されるわけではないので、事件の真相を読者が解き明かすことは困難であると思われる。むしろ、我々読者は宏昌に寄り添う形で、彼の苦悩に共感しつつ事件の真相に近づいていくことになる。物語のもう一つの軸となるのは、運動能力の遺伝的形質だが、おそらくは実際にもこうした研究は行われてもいるのだろう。エンターテインメントとしては概ねよくできていると思う。2017/07/16
Tetchy
555
よくもまあ謎を幾層も重ね合せた話を描くものだと読みながら感心した。スキーヤーの子の取り違え事件に関わる妻の謎は調べれば調べるほど深まっていく。まさに謎のミルフィーユ状態だ。ところで公式ガイドブックによれば、本書のテーマは“才能って何だろう?”とのこと。才能は遺伝でもあり、努力しなければ埋もれてしまうと登場人物を通じて描かれる。今の私は自分の才能を十分活かした職に就いているのだろうか?私にはどんな才能があり、どんな分野で今よりも活躍できただろうか?そんなことを知る術があればいいのにと本書を読んで強く思った。2016/03/15
takaC
250
世の中にはこの小説が初東野圭吾だという読者も少なからずいるのだろうけど、その場合はその後追っかけになるのだろうか?2013/03/26
hiro
236
同時期に書かれた『プラチナデータ』と同様にDNA鑑定がでてくる。読後はこの『カッコウの卵は誰のもの』方が断然良く、私の評価は『カッコウ』>『プラチナ』だ。それは、最後まで犯人がわからないという謎解きはもちろん、DNA鑑定が犯罪調査というネガティブな目的のためか、才能を見出すというポジティブな目的のためかという違いもあった。しかし、隠れた才能を無理やり見つけることが必ずしも本人の幸せにならないことや、それ以上に親子の絆について考えさせられた作品でもあった。この作品もきっと近いうちに映画化されるだろうな。2013/06/15
エンブレムT
210
タイトルと「私が育てた娘は、妻が他人から盗んだ子なのか?」という帯で、テーマは『托卵』なのだということは分っていたけれど、なるほどねー!スポーツにおける遺伝子に絡めた理詰めな展開といい、ドロドロしているであろう女性陣の心情を全く出さない描き方といい、ストーリーのみを追わせるミステリー作品になっております。実にクールな描き方です。・・・「みんな、それぞれ行動を起こす前に、もっと話し合おうよ・・・」などと、ミもフタもないことを思ったりもしましたが(笑)着地点が思いがけないほど優しく、読後感は悪くなかったです。2013/09/13