内容説明
血の入ったバケツ、黒焦げの骨…「ウィステリア荘」でホームズは『グロテスクなものから恐怖へは、ほんの一歩なんだよ』と言う。その他、ホームズが瀕死の床に伏せる「瀕死の探偵」など7編を収録。表題作「最後の挨拶」は、ホームズの隠退からかなりたった第1次世界大戦直前の話で、60代になった二人がふたたびイギリス国家のために活躍する。
著者等紹介
ドイル,アーサー・コナン[ドイル,アーサーコナン][Doyle,Arthur Conan]
1859‐1930。イギリスのエディンバラ生まれ。ロンドンで医師として開業するが成功せず、以前から手を染めていた小説の執筆に専念、ホームズもので大人気作家となる。また、映画にもなった『失われた世界』をはじめとするSFや、歴史小説など、数多くの作品を残した。実際の殺人事件で容疑者の冤罪を晴らしたこともあり、晩年は心霊学にも熱中した。ナイト爵をもつ
日暮雅通[ヒグラシマサミチ]
1954年生まれ。青山学院大学卒。翻訳家。日本推理作家協会、日本シャーロック・ホームズ・クラブ、ベイカー・ストリート・イレギュラーズの会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
57
新装版にて再読、短編集としては第4弾になります。このシリーズも6作目、ホームズを初めて読む人の為に、あえてシリーズ創刊順番に逆らい、読むべき基本的な順番を書きたいと思います。何故なら初めて読む人が、本作から読み始めたりしますと、間違った印象を持って仕舞いかねないと感じるからです。先ず「緋色の研究」「四つの署名」、短編集の冒険そして回想、「バスカヴィル家の犬」それから帰還、「恐怖の谷」を経て本作へと流れるのが良いのではと思います。光文社の本作は冒頭にワトソンの前書きが、きちんと載せてあり嬉しいかぎりです。2015/11/14
hiro
56
森見さんの『シャーロック・ホームズの凱旋』を読んでホームズの原作を再読したくなり、この光文社文庫の新訳ホームズ全集を読み出したが、数は少ないが内容を結構覚えている作品もあり、この短編集ではマイクロフトがホームズに助けを求める『ブルース・パーティントン型設計書』と、やはり『最後の挨拶』だった。全体としては、第一次世界大戦前の世相を反映した作品が多かったが、まずはなんと言っても60代になっても元気な二人の活躍がみれてうれしかった。続いて本当に最後の短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』に進む。2025/05/20
KAZOO
46
やはり何回読んでも新鮮な感じがします。とくに今回の新訳は本当にわかりやすく書かれているので、若い人にシャーロッキアンになってもらうのには最適なのでしょう。私はただヴィクトリア朝の雰囲気を伝えるには、もう少し工夫をしてもらいたかったと感じています。いつもの繰り言です。2014/10/31
藤月はな(灯れ松明の火)
36
証拠がない、時効であるなどの理由で現在の法に裁かれることのないという事件に対する制裁が多かったです。私刑は良くないことだとされているけど、苦しんだ人もいたのに法で裁かれるはずの加害者がのうのうと大手を振って歩いているという状況に対して許せる人は果たしてどれくらい、いるだろうか?対して己の良心によって生み出された亡霊によって自滅した『ボール箱』(当時のヴィクトリア時代ではタブーとされていた不倫をテーマにしていたため、当初、収録予定だった『シャーロック・ホームズの最初の挨拶』からは削除された)が印象的でした。2015/05/28
aika
34
50ページほどの短編で、これほど魅惑的な推理小説を書けるドイル、すごすぎます。「赤い輪団」は、一見なんてことないような事件の裏に隠された大きな犯罪をホームズが鮮やかに暴いていく様子にワクワクしました。「瀕死の探偵」では、ワトソンと同じように、ホームズにまんまと騙されました!「最後の挨拶」は終わりに近づくにつれ、ホームズとの永遠のさようならを予期させるような印象が悲しいです。あとラスト1巻を残すのみ、楽しみでもあり寂しくもあります。2017/01/05