内容説明
保養地で出会った美しい寡婦ヴァンダと理想の男女関係を築こうとする夢見がちな青年ゼヴェリン。やがて女王と奴隷の支配関係に行き着き、彼女による残酷な扱いに身をゆだねていくが、その嗜虐行為はエスカレートしていき…。かの「マゾヒズム」の語源となった著者の代表作。
著者等紹介
ザッハー=マゾッホ,レオポルト・フォン[ザッハーマゾッホ,レオポルトフォン] [Sacher‐Masoch,Leopold Von]
1836‐1895。小説家。出身地のレンベルクは当時オーストリア帝国領で、現在はウクライナのリヴィウ。大学講師や文芸誌の編集をしながら小説を書き、中・東欧文学の旗手として注目された。1870年には奴隷契約を結んだ女性との交際経験をもとにした『毛皮を着たヴィーナス』を発表し、その後は作家業に専念。存命中の’86年に、精神医学者クラフト=エビングが著書『性的精神病理』のなかで「マゾヒズム」の項目を立てている
許光俊[キョミツトシ]
1965年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
39
異常性愛の物語でした。女王と奴隷の関係に行きつき、残酷な扱いに身を委ねることで、より残虐行為がエスカレートしていくのが恐ろしかったです。「マゾヒズム」の語源が物語の象徴なのでしょうね。2023/11/05
Shun
36
マゾヒズムの語源となった著者マゾッホ。勤勉な青年ゼヴェリンは、女神の如き魅力を放つ女性ヴァンダと出会い恋に落ちる。互いに好意を抱くものの、男には彼女の奴隷になりたいと願う被虐妄想があり、そのために二人の関係はただならぬ波乱の様相を呈する。愛するが故にどうか鞭打ってくださいと懇願する男。今でこそ多様な趣味嗜好が知られ日本の作家にも影響を及ぼしたマゾヒズムと言う概念だが、当時の西洋でどう受け止められたかは想像できる。マゾに目覚めたきっかけは若き日の体験、そして裸身を覆う毛皮の重要性を説く男の魂の叫びを聞け。2023/01/22
ケー
9
いわゆる「マゾヒズム」の出発点たる作品で、確かにマゾ描写は多々あるのだけれど、それ以上にお互い不器用な男女のとにかく面倒臭い恋愛喜劇のように読めた。苦手に感じる方はおそらくいるだろうし、それは全く問題ないと思うのだけれど、少しでも興味があるなら読んでみるのがいいかも。いい意味で期待を裏切られた。2022/08/17
mint
8
こんな本だったとは!一言でいうと、非常に「かわいらしい本」だった。どことなく品もある。著者の体験から生まれたというけれど、今いわれる所のマゾヒズムとは結構かけ離れたイメージかも?ゼヴェリンの無我夢中さ、直情的で素直で、駆け引きも鬱屈もないあの感じ、かわいいし、ついついどうにかしてあげたくなるのではないか、、、確かに彼の前には堕落させられそうな気配すら感じる。 でもこのいわゆるマゾヒズムは「治る」もの、彼女が「治療してあげた」扱いになっていて、つまり何かが捩れた状態と評されるのね、というのは意外だった。2022/10/03
nightowl
5
当作品を作中作とした舞台「毛皮のヴィーナス」が面白かったので手に取る(高岡早紀、溝端淳平による二人芝居)。力関係がお互いの言葉でころころ変わることにぞくぞくする。会話による駆け引きの楽しさを堪能。こんなに倒錯したデカダンでもマノンやらカルメンの方向に行かず収束するのがドイツらしい...?2022/09/28