内容説明
1980年、サルトルの死と時を同じくして「朝日ジャーナル」に掲載され大反響を呼んだ対談の新訳。対談相手のレヴィは、鋭い批判でサルトル最晩年の思想に立ち向かう。生涯にわたる文学、哲学、政治行動などをふりかえりつつ、サルトルは率直に、あたたかく、誠実に、自らの全軌跡を語る。
著者等紹介
サルトル,ジャン=ポール[サルトル,ジャンポール] [Sartre,Jean‐Paul]
1905‐1980。フランスの作家・哲学者。パリ生まれ。1938年に小説『嘔吐』で作家として注目を浴びる。’45年、メルロー=ポンティ、生涯の伴侶ボーヴォワールらと創刊した雑誌「レ・タン・モデルヌ」で「アンガージュマン」(政治参加)宣言を行う。その後、サルトルの実存主義は世界的に大きな影響を与えた。’64年、ノーベル文学賞に選出されたが受賞を拒否・辞退
レヴィ,ベニイ[レヴィ,ベニイ] [Levy,Benny]
1945‐2003。フランスの哲学者。ピエール・ヴィクトールの名で、毛派のプロレタリア左派指導者として活動。1974年からサルトルの秘書を務めた
海老坂武[エビサカタケシ]
1934年東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。一橋大学、関西学院大学教授を歴任。フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
36
サルトルは、過去に流行ったときの文脈から一旦離れないと再発見されないでしょう。近年のサルトル紹介は決まって訳者が登場しますが、党派性の強い議論一辺倒になっています。最晩年に行われたこの対談の80年時点でも既に過去の人となっており、当時の若者が感じたのは挫折や傷つきであった筈です。本書でも、希望とともに挫折がキーワードとして登場します。この間の揺らぎから希望がアイロニーだと理解できないと、読む意味がなくなってしまうでしょう。なぜならば、この時点でサルトルは半失明で読み書きが全くできない状態だったからです。2019/02/08
vinlandmbit
19
しっかり読み切れていない所は、また再読の機に。。2022/08/16
おたま
13
サルトルとレヴィとの対談を中心にしながら、それを補足するために訳者の海老坂武の解説がⅠ~Ⅲまで収められています。現在この対談を理解するためには、こうした補助作業が必要でした。サルトルの過去の発言や著作について知るために、当時の時代状況を知るために、海老坂武は訳者の役割を超えて丁寧に関与しています。解説や注、年譜を読んでいくと、この対談をかなり理解することができます。サルトルの老いと肉体的な、思想的な衰えは隠しようもありませんが、それでも最後まで<希望>を語ろうとしていたことに胸を打たれました。2019/02/15
ラウリスタ~
12
この奇妙な対談、あるいは耄碌したサルトルへの卑劣な尋問、を解説なしに読むことはほとんど不可能だろう。解説によると、「他者との関係の倫理」と「左翼の原理」をめぐる、哲学と政治、二つの目的を持ったもので、いずれも「友愛」をキーワードにするとのことだ。この対談自体が単独で(素人にとって)価値があるとは、到底思われない(ボーヴォワールは、レヴィの横柄さに泣き出し、出版を止めようとしたと)。その上、これをいま出版するアクチュアリテが、よく分からない(震災後のボランティアあたりと友愛の問題をつなげたいよう)。2019/07/24
おりがみ
10
サルトルの著作を全く知らないまま読み始めました。対談というよりも一方的に問い詰められている感がありました。「人間」に対してこうあってほしいという願いや人類全体の関係の「友愛」についてどうあるべきか目的を急いで追及しているような印象でした。ひとまずこの対談より前の思想を知る必要があると思いましたので「嘔吐」を読みたいと思います。2019/11/22