出版社内容情報
ジョージ・エリオット[エリオット ジョージ]
著・文・その他
廣野由美子[ヒロノ ユミコ]
翻訳
内容説明
知的で美しいドロシア・ブルックは二十歳前の娘だが、自分の人生を偉大な目的に捧げることを熱烈に願い、温厚でハンサムな准男爵を退けて、学究生活に打ち込んでいる厳めしい五十がらみの牧師と婚約する…。地方都市ミドルマーチを舞台に緻密な人間描写で織りなす壮大な物語。(全4巻)
著者等紹介
エリオット,ジョージ[エリオット,ジョージ] [Eliot,George]
1819‐1880。英国ヴィクトリア朝を代表する小説家。本名メアリ・アン・エヴァンズ。中部の土地差配人の家に生まれ、寄宿学校で教育を受けた後、自宅で外国語などさまざまな学問を独学で学び、30歳で評論雑誌の編集者補佐に。1857年、男性名「ジョージ・エリオット」で小説を発表(翌年『牧師たちの物語』として書籍化)
廣野由美子[ヒロノユミコ]
1958年生まれ。英文学者。京都大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
116
原著を時間をかけて読んでいるのだが…難しい。訳を一度読んでいるはずなのに、どれほど上滑りな読み方しかしておらず、味わえていなかったかを感じて痛恨の極み。新しく出たこちらの古典新訳を手がかりに英書を読んでいる。新訳でまず1冊分読了した。さて、エリオットの素晴らしいところは、結婚してからの現実を描いているところ。冒頭のドロテアの美しさ、特に粗末な服を着ている時程の際立つ美しさの意味がようやく一巻の最後でわかった。そんな服に身を包んだドロテアのとるポーズが、ナザレ派の画家の目をひいたのだな。2024/06/15
KAZOO
96
先日、廣野由美子さんの「小説読解入門」(中公新書)を読んだので、その訳を手掛けておられる光文社古典新訳文庫の「ミドルマーチ」1を手に取りました。この本にも訳者による「読書ガイド」がついていて訳も読みやすく感じました。若い女性が主人公で当時としては自意識がかなりあり、伴侶として若い男性よりも知的なかなり年上の男性を選びます。それがよかったのか…?。当時の英国の地方のある程度のクラスの生活ぶりがわかります。私はも少し時代が後なのですが読んでいてヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」を思い出しました。2024/04/10
ころこ
51
「中庸の行進」のタイトルからして戦略的で、何となく読むと跳ね返されてしまう。普通の人物の人生上の出来事と、そのことによるちょっとした変化がテーマとなっている。織物の隠喩となっているが、2つの退屈な話がパズルのように交互に進行していく。昔の女性の宗教観や結婚観の変化にどのくらいの読者が興味を持つだろうか。ドロシアは年配のカソーボンに惹かれるが、若さゆえの一時の迷いから性急に結婚を決めてしまう。市長の娘であるロザモンドは街を倦んでいて、外の世界に憧れを抱いている。外から来た医師のリドゲイトに接近していく。2024/08/26
syota
43
【第100回ガーディアン必読小説1000冊チャレンジ】全4巻の大作。物語はやっと動き始めたところだ。英国中部の架空の都市を舞台とした群像劇で、今のところはストーリー的興味よりも、各登場人物の内面描写の方が読み応えがある。純真だが頭でっかちな理想家ドロシア、高い理想を持つものの打算が先立つ野心家リドゲイド、悪気はないがあまちゃんのボンボン・フレッドなど、それぞれ欠点を抱えた若者たちが社会に乗り出そうとしている。どちらかというとストーリーの面白さで読ませることが多い19世紀英国小説の中では異色の存在と思う。2023/09/12
Bashlier
43
5/5 リアリティが突出する傑作。登場人物が多いにも関わらず、各人が美しい部分も薄汚い部分も併せ持っていて、生き生きとしています。老若男女が生々しい感情を持って描かれる。そんな視点は現代文学では失われてしまいました。エリオットは自分とは異なる年代・性別・階級・思想に属する人々の内面をどの様にしてここまで掘り下げたのでしょう。主人公のフォロワーが拡声器を持ち、反対派は猿轡をされたような最近の作風に疑問を感じる昨今。世界が失ってしまった”何か”がこの作品の中に。2023/07/28