出版社内容情報
バリー[バリー]
南條竹則[ナンジヨウ タケノリ]
内容説明
かつて鳥だったころのことが忘れられず、母親と別れてケンジントン公園に住むことになった赤ん坊のピーター。葦笛で音楽を奏でたり、公園内の小さい家での一夜の出来事など、妖精たちや少女メイミーとの出会いと悲しい別れを描いたファンタジーの傑作。挿し絵アーサー・ラッカム。
著者等紹介
バリー,J.M.[バリー,J.M.] [Barrie,James Matthew]
1860‐1937。スコットランドの作家・劇作家。大学を卒業後、ロンドンに引っ越したのち、小説と劇作に意欲的に取り組み。劇「ピーター・パン、あるいは大人になろうとしない少年」(1904年)が大成功を収め、これを小説化したのが『ピーターとウェンディー』(1911年)。その後も人気劇作家として数々の戯曲を発表する。1937年死去
南條竹則[ナンジョウタケノリ]
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
116
もう少し大きな版で絵もカラフルなもので読みたい気がしました。ピーター・パンの前日談のような感じの話です。訳者による解説が非常にわかりやすく読む価値があります。2017/08/11
まりお
47
自分は鳥だ、と思い込んだ男の子の赤ん坊。彼は家から飛び出し、ケンジントン公園へ。そこには鳥や妖精が住む場所。鳥と赤ん坊の、どっちつかずの男の子はやがて家に帰るのだが。公園の隠れた所で息づく妖精達の生活や、チャンスを逃し永遠となった男の子、公園の中に異世界が満ちる物語だった。2017/09/02
藤月はな(灯れ松明の火)
42
翻訳者が怪奇・幻想小説翻訳でお馴染みの南條竹則氏、挿画がアーサー・ラッカムとは、なんて贅沢なんでしょう!ピーターパンがネヴァーランドに行く前の物語。シェリーなどの英国詩人も登場しており、何時までも無垢なピーター坊やが一種の詩神としての立ち位置も分かります。鳥でもなく、人間でもない存在になってしまったピーター坊やがいつも裸だったのには吃驚。でもピーターを苛める鳥や一度はお母さんの元に帰ろうとしたピーター坊やが戻れなかった場面、違う世界にいるが為に訪れる初恋の人との別れは、何度、思い返しても胸が痛む。2017/08/15
南雲吾朗
31
フック船長も、ウェンディーも、ティンカーベルも出てこない。もちろんネバーランドも海賊もタイガー・リリーもない。今迄知っていたピーター・パンとは全く違う物語。ワクワクする冒険や、海賊との戦闘等全くないのに、すごく心に浸みてくる。「この世に初めて生まれた赤ん坊が初めて笑った笑い声が割れて、そのかけらが妖精になった。」なんと夢のある表現だろう。ピーターが母親の元に帰れなくなったところでは、思わず泣けてきてしまった。後書きを読むと物語の訳が解る。短いけど良い小説。2018/03/12
ころこ
23
ディズニーアニメを観てみました。アニメを観ての印象は、彼の暴力や知恵と共に成長しない姿が怖いということでした。解説によると、本書のピーターパンが①幼いピーターパン、その後に劇場用につくられたのが②少年ピーターパンということのようです。②は大人と子供の境界にいて両義的なキャラの魅力を①から生成させているように感じます。日本では女の子を起用することで暴力性を消去して、代わりに男と女の両義性へと再解釈しています。①と②は大きく異なっていますが、強力なキャラを生み出したプロトタイプであることには間違いありません。2018/10/13