出版社内容情報
17世紀小説の最高傑作であり、近代心理小説の祖とされる作品。
内容説明
フランス宮廷に完璧な美を備えた女性が現れた。彼女は恋を知らぬままクレーヴ公の求婚に応じ人妻となるが、舞踏会で出会った輝くばかりの貴公子に心ときめく。夫への敬愛、初めて知った恋心。葛藤の日々に耐えられなくなった夫人は、あろうことかその恋心を夫に告白してしまう…。
著者等紹介
ラファイエット夫人[ラファイエットフジン] [Madame de Lafayette]
1634‐1693。マリ=マドレーヌ・ピオシュ・ド・ラ・ヴェルニュとして、フランスのパリに生まれる。父は宮廷の技術官、母は宮廷医官の娘で公爵夫人の侍女。ラテン語、イタリア語、古典文学を学び、自身も宮廷に身をおき、21歳のときラファイエット伯爵と結婚する。無署名で出版した『モンパンシエ侯爵夫人』が好評で、その後『アンリエット・ダングルテールの記録』からは著者名をラファイエット夫人とする。古典の名作と謳われ、日本の戦後文学にも大きな影響を与えた
永田千奈[ナガタチナ]
東京生まれ。翻訳家。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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帽子を編みます
65
【フランス文学を読もう】フランス近代小説の祖です。やはり読む価値はありました。絢爛たるフランス宮廷の描写から始まります。王妃カトリーヌ・メディシス、王太子妃メリー・スチュアート、宰相、ギーズ家の面々、そしてヒロインの登場です。終盤まで直截に愛を告げることはなく、もじもじした心理合戦が続きます。名も明かされないヒロインは記号であり、美しさという要素のみで愛され、相手を愛します。抽象化された恋愛、理想の洗練、頭脳パズルのようです。実際とかけ離れた空想の世界を描く手段としての小説、新たな世界を開拓した一冊です。2021/07/15
優希
53
面白かったです。心踊るような出会い、初めて知った恋心。ただ、人妻という立場での葛藤もあったことでしょう。初恋が悲恋に終わるのは、自分の道を守り生きていく覚悟だったのですね。恋愛の悲喜交々を描いていると思いました。2023/08/12
Ryuko
42
「もしかすると、私が彼に恋していなかったからこそ、夫は私を愛し続けてくれたのかもしれません。同じ方法で、あなたの愛情をつなぎとめることは無理でしょう。あなたの恋は、これまで障害があったからこそ、続いたように思います。いくつもの障害があったから、あなたは意地になって恋を貫いたのでしょう。」多分その通り。貞節な妻であり続けることで、夫と想い人両方の愛情を自分に引き付け続けた賢い女性。訳注も充実していて、実在のフランスの王族などの恋愛事情も面白く読んだ。2020/03/14
みつ
36
初読の17世紀フランス小説。舞台は16世紀半ばで、延々と続く当時の政治情勢には少々辟易するが、シャルトル家令嬢(名前は明らかにされず)が結婚し、クレーヴ夫人になってからは、恋愛感情の機微が描き尽くされ、心理小説の傑作と呼ばれるにふさわしい。夫の丁寧な言葉遣い、「あなたは私の妻なのに、私は人妻を慕うようにあなたに横恋慕している(p245)」の切々たる訴えかけが最も印象的。裏表紙で「あろうことか(貴公子へ)の恋心を夫に告白してしまう」とある箇所(p191以下)はさすがに古風である分、心理の綾は読み応えあり。2021/07/26
星落秋風五丈原
34
【ガーディアン必読1000冊】「正直なのがいちばん大事だと思う。だから、たとえ自分の恋人が誰か別の人を好きになったと正直に告白してきても、それが妻からの告白であっても、私は悲しみこそすれ、怒るようなことはないでしょう。むしろ、恋人や夫という立場を忘れ、助言したり、同情したりしてあげたいのです」発言者クレーヴ公は他人のコイバナのついでに自身の考えを述べただけで過去に告白された経験はない。新妻は社交界に出たばかりの若い令嬢で世間知らず。自分以外の男性を知らないと知った余裕が言わせた台詞であると書けば意地悪か。2023/08/30