内容説明
音楽、演劇、詩、建築、彫刻に絵画。芸術作品とは、初めに構想(アイデア)があってそれを具現化したものだと私たちは考えがちだが、それは違うとアランは言う。では、どう考えるのか?戦火のなかで書きとめた『芸術の体系』に次ぐ、アランの斬新かつユニークな芸術論集。
目次
体系
芸術と情念
見世物芸術への応用
ダンス
音楽
詩
見世物
衣裳
建築
彫刻
彫刻(続き)
絵画
絵画(続き)
デッサン
芸術家
著者等紹介
アラン[アラン] [Alain]
1868‐1951。フランスの思想家。フランス各地の公立高等中学校で教師生活を送るかたわら、執筆活動を続ける。1903年、新聞で「プロポ」と題する短文の連載を始め、その後、この短文形式がアランの自由で柔軟な思想を表現する最適な形となった。1914年、46歳で第一次世界大戦に志願兵として従軍し、苛酷な戦場で『芸術の体系』を書く。1951年5月、文学国民大賞を受賞。同年6月、パリ西郊ヴェジネの自宅で死去
長谷川宏[ハセガワヒロシ]
1940年島根県生まれ。東京大学文学部哲学科博士課程単位取得退学。哲学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吟遊
15
アラン『芸術の体系』が構成はかなり整っていて、かつ、叙述が包括的(その分、ぶ厚い)であったのに対して、後年の講義録であるこちらは、構成も自由、一回の講義も長くはないから、途中で切れてしまう。エッセイ風のフランス・モラリスト流の筆の運びは健在で、発想のままに書かれた言葉は、やはり新鮮で、活き活きしている。だが、他方で相変わらず、前後の文脈が取りにくい。/「見世物」「衣装」にそれぞれ2章を割いているのはユニーク。軍事パレードを美しい、と評するあたりは元志願兵。屈託がない。最後の一章「芸術家」はとくに面白い。2017/01/26
たばかる
13
アランに触れたのは初だったので、一貫した芸術論の展開に面食らった。精緻な論調で小難しい印象だけれど、それが内容に引き込ませる。難度•興味の点で再読が必要。以下は注目した点の抜粋#ダンス、詩、音楽は内面を規制しつつ表現するのに対して劇や祭りといった見世物は内面の表出を避けるようだが、真の役者は自分のアイデンティティが表現の土台だと認識する。#芸術を通した社交の営みが、個々の文脈の中で鑑賞者との記号の交換、一致、強化をもたらすことによって生きる上での喜びを生じさせる。2019/05/05
ラウリスタ~
13
アランを読むのは初めて。本書では講義形式で芸術全般についてわりと抽象的な話をする。だからぼうっと読んでいると、なにが書かれているのか分からなくなりがち。でも、言っていることはそんなに特別なことではなく、むしろ教科書的なことばかりにも思えるが。カントの助けを得て発見する「美しいものは心地よいものではない」という事実や、芸術家の頭のなかに既にある構想を表現するのが芸術ではなく、制作活動を通じて曖昧模糊としたものが形を得ることなど、まあそりゃそうでしょう、なんだけれども、大事な事だから何度でも言うべきか。2015/12/28
ゆうきなかもと
6
天から降って湧いてくる何かを形にするのが、アランの考える芸術家なんだと思った。言い換えれば、時代、環境、テクノロジーと個人の持っている資質が、ぶつかり合って、必然的に、ある芸術作品が生まれると言うこと。特に印象的だったのは、祭りを芸術の1ジャンルとして語っているところ。アランは独自に体系的に個々の芸術を把握していることが、「芸術の体系」と本書を読めばわかる。芸術とはなんぞやを考えたい人には多いに手がかりになると思う。2023/07/12
O. M.
4
ダンス、音楽、建築、彫刻、絵画など芸術について、個々の本質を比較した、全20回の講義集。かなり難解な文章で、正直十分に理解できたと言い難い。しかし芸術という、言葉で説明することが難しいものに挑み、いくつもの興味深い見解を提示する哲学力はさすが。個人的には、芸術作品における時間の重要性や、芸術家はなにをもって芸術家たるか、などの考え方は勉強になった。読後には、ネットが普及した現在における芸術を、アランの文脈で自分なりに考えてみるのも面白い。2015/02/08