内容説明
「いつもいっしょ…」「こっそりと…」「もし二人が恋仲にでもなったら…」彼女は視線をゆっくり上げ、わたしたちは互いにみつめあった…。みずみずしい描写で語られる愛と友情、波瀾万丈の物語。小説史上まれにみる魅力的なヒロインが、こんなところに隠れていた。美少女と美少年、美しくせつない「恋」と「疑惑」の物語…偏屈卿と呼ばれた男の、数奇な?自叙伝?ブラジル文学の頂点。ブラジル文学第2弾!
著者等紹介
マシャード・ジ・アシス[マシャードジアシス] [Machado de Assis]
1839‐1908。ブラジルを代表する作家。第二帝政期の奴隷制度が敷かれたリオデジャネイロの貧しい家庭で育つ。父方の祖父母は黒人の解放奴隷で、母親はポルトガル移民。独学で、書店や印刷所で働きながら詩人として文壇にデビュー。新聞の時評、詩、戯曲、短・長編小説、翻訳など、手がけたジャンルは多岐にわたる。ブラジル文学アカデミーの初代会長を務めた
武田千香[タケダチカ]
東京外国語大学教員。文学を中心にブラジルの文化を研究する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
145
短い章立てで、150近くの章があり1章が1ページに満たないのもあり、場面転換が早くしかも訳文がわかりやすく読みやすい本でした。内容的には男性の回顧録のような感じで関係する人物の恋愛関係での話がどれが本当か、という感じでつづられていて楽しめました。この作者のほかの作品もあるので読んでみようと思っています。2016/04/26
藤月はな(灯れ松明の火)
70
老いらくの男が初恋の君について語る。細切れの章は読者への語り掛けや次の展開へ期待を膨らませるような予告などの脱線もある。まさに自由闊達な語りだ。しかし、この小説のポイントはベンチーニョの一人称で貫かれている事だ。カピトゥらの心情は本人達からは語られない故に彼の疑惑の確証が得られない。また、カピトゥの不貞行為への疑惑は克明に描くのに、自身が犯した不貞についてはかなり、暈しているなど、アンフェアだ。『失われた時を求めて ソドムとゴモラ・囚われの女』めいている筋書きなのだ。自己憐憫程、醜く、同時に甘いものはない2023/07/04
ラウリスタ~
18
ブラジルW杯中なので、初めてかもしれないブラジル文学を。これ、かなり面白い。2、3ページの多くの短い章で構成されるテンポのいい小説。教養小説のように始まり、幼馴染と結ばれる幸福な物語として締められるかと思いきや、何度かあった伏線をちゃんと回収してのどったばた。語り手の狂気(嫉妬)が生んだ悲劇なのか、それともあんなやさしいヒロインの不義密通があったのか。サスペンス的な興味をそそりつつも、それがなかったとしても非常に面白い発展(と挫折の)小説。2014/06/20
Porco
17
ブラジル最大の作家の作品だそうですが、訳者解説まで含めて、実に興味深い。2018/09/03
かもめ通信
16
ドン・カズムッホ(=偏屈卿)と呼ばれる男の回想録は、初恋の思い出や青春の1ページから幸せな結婚生活へと続いていくが、読みながら「果たしてこの語り手は信頼できるのか?」「これは後々のための伏線なのか?」とついつい疑ってしまう私はたぶん、かなりすれた読者なんだろうな。 果たしてこの物語は「素直な読者」に向けて書かれたものなのか、あるいは「偏屈な読者」に向けて……?? まあ、どちらでも楽しめればいいわけだけれど。2014/06/05