内容説明
「徳は教えられるものでしょうか?」メノンの問いに対し、ソクラテスは「徳とは何か?」と切り返す。そして「徳」を定義する試みから知識と信念、学問の方法、魂、善をめぐって議論は進んでいく。西洋哲学の豊かな内容をかたちづくる重要な問いがここで生まれた、初期対話篇の傑作。
著者等紹介
プラトン[プラトン]
427‐347B.C.古代ギリシャを代表する哲学者。アテネの名門の家系に生まれる。師ソクラテスとの出会いとその刑死をきっかけに哲学の道に入り、40歳ころには学園「アカデメイア」を創設して、晩年まで研究・教育活動に従事した。ソクラテスを主人公とする「対話篇」作品を生涯にわたって書き続け、その数は30篇を超える。その壮大な体系的哲学は、後世の哲学者たちに多大な影響を及ぼした
渡辺邦夫[ワタナベクニオ]
1954年生まれ。茨城大学人文学部教授。東京大学大学院比較文学比較文化専門課程博士課程単位取得退学。古代ギリシャ哲学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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molysk
70
「徳(アテレー)は教えられるものでしょうか?」メノンの問いに、ソクラテスは「徳とは何か?」と問い返す。ソクラテスとの対話を経て、徳はよい行いを導くもの、とメノンは考える。では、徳は教えられる知識なのか?現実には徳の教師はいないので、異なる。生まれつき得られるものでもない。ならば、徳は自ら正しく考えることで得られるのではないか?神ならぬ人である限りは完全な知は得られないが、よりよい知を目指すことはできる。ソクラテスは、他人に依存する態度を戒め、自ら考えることの大切さを、メノンと後世の私たちに問いかけるのだ。2023/04/02
Gotoran
49
プラトン初期末の対話篇。メノンの問い「特性とは教えることができるものであるか」に対して、ソクラテスは「徳とは何かを知らないこと」と答え、まずは徳が教えられるものかどうかを探求する。そして徳は、他の知識のように教えられるものではないことを明らかにしていく。肝心の「徳とは何か」については明らかにされてはいない。徳を語る過程で、イデアを想起させる場面がありプラトン哲学を意識させてくれた。また徳とは何かに加えて知識や学ぶということまで、幅広く思いを巡らせることができた。訳者まえがき、あとがきが有益だった。2018/06/23
かふ
22
「100分 de 名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』」で徳(アレテー)がもう一つ理解出来なかったので、その元となるプラトンの著作を読んでみた。100分 de 名著 第4回「友愛」で、日本の社会状況で会社関係の友人は利害関係だけだし、ネットは快楽関係で、徳で結ばれる友人関係なんて出来そうもない。だから一人でも生きていけるという生き方が主流になる。で、プラトン『メノン―徳(アレテー)について 』を読んだわけだが、アリストテレスよりはソクラテス(プラトン)の方が理にかなっているような気がする。2022/05/24
まると
21
「徳は教えられるか」を巡るソクラテスとメノンとの禅問答のような対話には様々な論点があるのだろうけど、徳は単なる知識とは違い、自ら考えることによって得られるもの、それに気づかせることこそが教育の本質なのだという意図を持って書かれたものと自分なりに解釈した。いま流行りの「主体的・対話的で深い学び」に通じる普遍的な教育論ですね。本編に匹敵する分量の解説とあとがきが少々難解で読むのに時間がかかった。学術的に細部にこだわりたかったのだろうが、一般読者向けなのだから、こちらは簡にして要を得たものにしてほしかったかな。2021/07/07
ラウリスタ~
21
「徳とは教えられるものか」という問いを巡って、より広く、「知らないことについていかに探求するか」という哲学入門に繋がっていく。エピステーメー(原因推論を経て獲得した知識)と正しいドクサ(考え、思わく)の行動上の類似について。「そもそも徳とは何か知らない」というソクラテスは、自分が神でないからこそ「本物の知」を持っていないことを知っており、「近似的な知」である「徳」のたゆまぬ向上にはげむ。「会ったことはないがソフィストくらい知っている」というアニュトスは「知一般を徹底的に軽視」する人。訳者解説が読みやすい。2017/12/10