内容説明
「ぼくたちはルソーの語る意味での主権者なのだろうか、それともルソーが嘲笑したように、選挙のあいだだけ自由になり、そのあとは唯々諾々として鎖につながれている奴隷のような国民なのだろうか」(訳者あとがき)。世界史を動かした歴史的著作の画期的新訳。
目次
社会契約論(最初の社会;最強者の権利について;奴隷制度について;つねに最初の合意に溯るべきこと;社会契約について ほか)
ジュネーブ草稿(社会体の基本的な概念;法の制定;国家法または政府の制度)
著者等紹介
ルソー,ジャン=ジャック[ルソー,ジャンジャック][Rousseau,Jean‐Jacques]
1712‐1778。フランスの思想家。スイスのジュネーヴで時計職人の息子として生まれる。16歳でカトリックに改宗。家庭教師等をしながら各地を放浪し、大使秘書を経て、37歳で応募したアカデミーの懸賞論文『学問芸術論』が栄冠を獲得。意欲的な著作活動を始める。『人間不平等起源論』と『社会契約論』で人民に主権があると主張し、その思想はのちのフランス革命を導くこととなった
中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。哲学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
41
社会契約論では、国家の秩序をつくる法を決める決議が、各人の特殊意志の総和によるのではなく、一般意志として示されることが、その国家にとって良いことである。国家に入った瞬間に一般意志に従うというメタ規則である社会契約に従うというにより、国家にいるということは一般意志に従わなければならないという強制が働く、という明快なメカニズムが示されています。ルソーが中途半端に考えていないのは、これが共同体のことではなく国家のことであるとしていることと、決議に関することが立法であって、行政のことは別途、民主制、貴族制、君主制2019/03/19
かわうそ
37
「軍務のように固有の才能…」が必要なものは抽選ではなく選挙にすべきであるというが、確かにルソーの言うように行政の裁量が極限までに抑えられているという条件では行政の長を抽選で決めるというのは正しい。しかし、ルソーのように初期の国民国家においては裁量の範囲を狭めることは可能だった。というより裁量の範囲は当たり前に狭かったのだ。現代は国家機構自体が膨張してるのであって行政の裁量というのは広いのである。であるから、裁量の広い行政の長を抽選で決めることは危険をである。ルソーの時代とは前提条件が異なることに注意すべき2022/03/31
かわうそ
32
国家が衰弱してくると、個別の利益が優先されるようになる。すなわち、個別意志が一般意志を凌駕してしまうのである。そうなると、一般意志は無視されるようになる。いまの日本はまさにこの状態である。本来、市民は選挙を通じて一般意志を表明するのだ。選挙に行かなければならないのはこのためである。すなわち、一般意志は普段は見えないものであり、選挙を通じてしか表に現れない。一般意志が表明されない以上は、統治者が一般意志に則っているかという判断も不可能になる。そして、ついには統治者の個別利益のみが国家を支配する。2022/04/21
小波
23
とても難しかったし、クリスチャンとして、非常に耳の痛い話が多かった。「キリスト教が教えるのは服従することと依存することだけである」とあり。キリスト者のあり方について考え込んでしまった。2021/10/02
翔亀
23
【民主主義なう1】フランス革命を準備し近代の民主主義の基礎を築いたとされる政治理論書。一方で全体主義とも関連付けられてきた古典。流石にすいすいという訳にはいかず解説書片手だったが、難解な哲学書ではなく当時のベストセラー作家らしく実に読み易い。<一般意志>というコンセプトにより人民主権の理論を構築するわけだが、読んでみると意外に実践的。ローマ共和政の民会の例を引きながら、生地ジュネーブの市民総会への提案になっている。地域の自治会や日本の政治のあれこれを思い浮かべてしまった。現代社会へのヒント満載だ■942014/03/09