内容説明
わたしたちは、フランス革命を導いたルソーの代表作である本書と『社会契約論』に繰り返し立ち戻ることで、国民がほんとうの意味で自由で平等であるとはどういうことなのか、どうすれば国民が真の主権を維持できるのかを、自分の問題として問い直すことができるはずである。
著者等紹介
ルソー,ジャン=ジャック[ルソー,ジャンジャック][Rousseau,Jean‐Jacques]
1712‐1778。フランスの思想家。スイスのジュネーヴで時計職人の息子として生まれる。16歳でカトリックに改宗。家庭教師等をしながら各地を放浪し、大使秘書を経て、37歳で応募したアカデミーの懸賞論文『学問芸術論』が栄冠を獲得。意欲的な著作活動を始める
中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。哲学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
70
人間の本質をつかむために獣や野生人まで遡って考察している。草食動物と肉食動物を人間と比べるあたりは面白い。2018/08/18
Aster
46
本文のみ。解説は気が向いたら読む。何かと引用されるルソー、読んでみたらびっくりというか、人間の不平等の起源について推測のみで延々と語っている。これが合ってるかどうかは別として当時は中々ラディカルな試みだったのだと思うし、個人的には考え方に賛成かな…?いずれにせよ読んで良かったと思う。もっと早く読んでおけば良かったとも思ったけれど、理解出来る場所に居なければ今読んだこの“今”がベストタイミングなのかもね…なんて。2021/04/24
molysk
43
人間不平等起源論は、「人間の不平等の源泉はどのようなものか」という論文課題に対するルソーの回答。本書の前半は、人間の自然状態である野生人について。孤立状態にある野生人は、生存に不自由ない身体と精神を持ち、美徳も悪徳も知らない、ほとんど平等な存在であった。本書の後半は、社会状態の形成について。力を合わせることの利益を知った人々は、孤立をやめて家族や共同体を築き始めるが、これは他者との比較や不平等の始まりでもあった。財産の私有で富める人々は、自らを保護する法を作り、国家が成立して、不平等は固定される。2020/03/22
イプシロン
40
(再読)ルソーの思考のスマートさと妥当性が読みとれる名著である。問うても答えの出ない真理を探求しない。そうではなく、現実に残された歴史や文献を正しく解釈し、そこにある問題点を浮かび上がらせて、対処法を考えていく志向性が明瞭に読みとれる。そうしたルソーの姿勢は冒頭に掲げられたアリストテレスの言葉「自然なものとは何なのか、それを自然をなくしたもににおいてではなく、自然に一致した状態にあるものにおいて探そうではないか」に現れている。したがって、本著の命題における結論は自然状態の人間=理想の人間ということになる。2021/05/19
イプシロン
33
自然状態にある人間とはいかなる状態にあるか。この問いへの推察から導きだされた理論が本質をついていて素晴らしい。人間が生物としてもつ二つの自然な感情は「自己愛」と「憐み」であると。また人間が社会を作ることで「憐み」が希薄化する原因への推察も的確だ。すなわち所有欲とそれへの保護欲によって権威権力に接近することだと。こうして人間の持つすべての悪徳が花開くと。それへの根本的対策は自然状態に戻るという歴史の逆転ではなく「憐み」という感情の回復にあるのだろうが、ルソーはもはやそれを諦めていたと思えた。2019/02/13