内容説明
亡き両親が残したビデオを見た智子は、かつて自分に特殊な力があったことを知る(「朽ちてゆくまで」)。わたしは凶器になれる―。念じただけで人や物を発火させる能力を持つ淳子は、妹を惨殺された過去を持つ男に、報復の協力を申し出る(「燔祭」)。他人の心が読める刑事・貴子は、試練に直面し、刑事としての自分の資質を疑ってゆく(「鳩笛草」)。超能力を持つ三人の女性をめぐる三つの物語。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年東京都生まれ。’87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。’93年『火車』で山本周五郎賞。’97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞。’99年『理由』で直木賞。2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、’02年司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞。’07年『名もなき毒』で吉川英治文学賞。’08年英語版『BRAVE STORY』でThe Batchelder Award受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
194
宮部みゆきさんの超能力者モノの短編3編を収録。予知能力を持つ「朽ちてゆくまで」、念力放火能力を持つ「燔祭」、透視能力を持つ「鳩笛草」。どの作品も異様な能力を持った主人公達の心理や感情が丹念に描かれ、読ませます。「朽ちてゆくまで」での智子が封印されたビデオテープを発見し、己の能力を思い出す場面に背筋がぞくりとする。「燔祭」は「クロスファイア」の原型ですね。淳子のこれからが気になるラスト。貴子が徐々に能力を喪う「鳩笛草」。喪失感とこれからの生き方に涙が出そうになりました。能力者の寂寥感の描写に唸る。名作です。2017/09/10
zero1
113
超能力を持つ女性の三本勝負!を再読。「朽ちてゆくまで」は予知能力を持った智子の話。須藤の存在は、まるで時代小説のよう。宮部が読者から支持されるのは、人の善なる部分を信じているから。「燔祭」は青木淳子が登場。警察が手出しできない犯罪者を狙う淳子。過去と現在を交互に描くことで話が立体的になっている。「クロスファイア」につながる作品。表題作「鳩笛草」は人の考えが読める女性刑事、貴子が主人公。消耗してピンチに。超能力を持つということの苦しさを描いているのはキングの影響か。「クロスファイア」も再読せねばなるまい。2018/11/30
おか
83
超能力者の話 3編。宮部さん初めて超能力をSFではなく ミステリーや恋愛小説の中で書こうとしている との事。仰る通り 日常の中に 潜む超能力者がうまく描かれている。「朽ちてゆくまで」はミステリー色が一番強いかな「燔祭」は「クロスファイア」の導入部「鳩笛草」表題作だが 一番長くて 一番 ウルッと来た^_^ やっぱり 宮部さん いいっすねぇ♪( ´▽`)2017/08/20
ま~くん
82
予知、発火、人の意識を察知する超能力。法で裁けない非道な犯罪者を焼き殺す。容疑者の持ち物に触れるだけで犯人の意識を覗き見る。巻末の解説で「これは宮部みゆき自身の物語なのである」とあった。確かに私みたいな凡人から見ればこれだけ大ヒット作品を連発する彼女は超能力者かも。鳩笛草に登場する女性刑事の様に使えていた能力が失われていく恐ろしさ。ふさふさだった毛がよく抜ける、物忘れが多くなる、現役選手の時は一度も怪我等したことはないのに最近椅子から立とうとするだけで腰が痛い。超能力と一緒にしてはやっぱり駄目か・・。 2025/08/02
ポップノア♪@9/4に退院しました。
81
読友さんのお勧め。超能力をテーマにした短編集。幼少期の自分が泣いている意味不明なビデオテープからかつて有った自らの能力に気付く「朽ちてゆくまで」。妹を殺された男性に復讐を持ち掛ける「燔祭」。能力を活かそうと刑事にまでなったものの、徐々にその衰えに苛む「鳩笛草」。どの話も闇深く、超能力者であるがゆえの苦悩を巧み且つ独創的に描いている。それでいてラストは光が射すものもあり、読後感は爽やかなのが不思議。個人的には「朽ちてゆくまで」が1番ハラハラしたかな。聞いたことの無い超能力はウィキで調べたほど堪能しました。2021/01/29