内容説明
幕末から明治を生き、横浜の地に名を残し、易聖と呼ばれるまでになった男、高島嘉右衛門。江戸の商人であった彼は、商売の手違いから投獄され、牢内で「易経」とめぐりあう。上下二巻を暗誦するほどに熟読し、彼は天来の易占の才能を開花させる。後に自由の身となった嘉右衛門は、横浜に新天地を開拓し、更に伊藤博文の相談役として、その類い希なる能力を発揮する。
目次
父の余慶、子に及ぶ
氷塞の試練
火と水の試練
獄舎の試練
新天地横浜の若き獅子たち
東京-横浜間の鉄道
先駆者の道
横浜高島町の不夜城
財閥を望まぬ高士
日清戦争の予言
日露戦争の予言
虚空無限
著者等紹介
高木彬光[タカギアキミツ]
1920年青森県生まれ。京大工学部卒。’48年に江戸川乱歩の推薦による『刺青殺人事件』でデビュー。’49年『能面殺人事件』で探偵作家クラブ賞を受賞。’95年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コージー
64
★★★☆☆明治に活躍した、実業家であり易断家である高島嘉右衛門。横浜の建築や鉄道開通などに寄与する。現在の高島町は、高島嘉右衛門の名前から付けられている。彼の易占は逸品で、当時の大物財界人も足しげく通ったほど。日清日露戦争の勝利の影役者とも言われている。財閥として名を馳せることもできたくらいの逸材だが、私欲よりも公益を先に考える、素晴らしい人物である。【印象的な言葉】人間ほんとうに命をかけ、至誠をもって事にあたれば、たいていのことは成就するものでございます。2018/06/15
デビっちん
32
再読。相学を噛ったり、易の64卦を覚えてからの再読だったので、物語中に出てくる卦を含めて楽しむことができました。生まれついた宿命や今後どうなるかが大枠でもわかると、成功の確率が高まったり、対峙を避けることができたりして大人な行動をとることができます。占いを実施する前の場の整え方だったり、卦の解釈は参考にしたいと思いましたが、何度読んでも面白いストーリーです。易聖の生涯を中心に、横浜の発展や教科書に記載されている人物たちの裏側を覗いているような感覚を味わいました。2017/03/14
デビっちん
22
再読。自分自身のことをここまで的確に占えるなんて凄すぎです。きっと天地とつながっていて、十分にそのエネルギーを得ているからでしょう。そうなるような目標や意識の向け方を今回読みとれたような気がしました。2019/03/15
澄
21
高島嘉右衛門は易聖、占いの人ではあるが、本来若い頃は実業家であった。入牢したりと波瀾万丈ともいえる生き様に感銘を受けた。伊藤博文とも親密な関係で、日清・日露戦争の戦況を占い勝利に導いたことは瞠目に値する。日本男子は一読すべき本と思う。2014/09/04
rokubrain
18
人間のスケールの大きさを表すことばは父、先代の嘉右衛門から受け継がれている。 父「おれは、天に莫大な金を預けてある。お前は苦労をしてそれをうけとるがよい」 大ぼらを吹き、それを人生の指針にしてしまう気概が今的に言うと神ってる。 商売人でありながら「損得が問題なのではない。信用が問題だ」と喝破する。 佐賀藩、南部藩との絆は、この親子にしてできた初期の事業の「看板」だ。 三井、三菱と並ぶ「高島財閥」が出来ても不思議はなかった彼の足跡が実際そうならなかたのは、自身の信念によるところもあったかもしれない。2019/06/01
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