内容説明
イギリス・ウェールズ北西部・彼の地の伯爵は長年「バベルの塔」建設に取り憑かれていた。六十年の歳月をかけて完成した日、悪夢の惨劇が―(表題作)。残業の夜、男は急停止したエレベーターに閉じこめられてしまう。中にはもう一人、髪の長い女が。そのビルには幽霊が出るという噂があって…(「上下する地獄」)。鮮やかなプロットが光る単行本未収録作十一編。
著者等紹介
若竹七海[ワカタケナナミ]
東京生まれ。立教大学文学部史学科卒業。1991年、連作短編集『ぼくのミステリな日常』でデビュー、新人離れした力量で注目を浴びる。以降、青春ミステリーから歴史ミステリー、コージー・ミステリー、ホラーまでジャンルを問わず、多彩な作品を次々に発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobby
137
バラバラに並んだホラー11篇の最後の表題作で目にする葉村寅吉という名前にニヤリ♬ということは語り手は彼女だよね!どれも徐々に引き込み終盤にゾクゾクさせる恐怖や毒性が絶品!ただ、ちょっと個人的にピンと来てない終結もあるのが残念…年代揃わずの作品の数々ながら、ラスト近くで表されたワードが連鎖していく構成も上手い!全部ではなかったのかな(笑)身の回りの食物やモノを題材にした「のぞき梅」「上下する地獄」が生々しくて怖い。「追いかけっこ」の堂々巡りからのオチにもゾワッと。「バベル島」の教訓は間違った教育は恐ろしい…2022/09/06
ちょろこ
126
怖面白い一冊。人怖&霊がうまく混ざり合った11編のホラーは一言で言うと怖面白い。そして若竹さんらしい毒をパラりと振り撒かれたら、全部好みでしかない。因習を絡めた「のぞき梅」からどっぷり心浸かり、ストーリーの中のキーワード一語が次のお題へとバトンリレーのように紡がれていくのもうまい。「上下する地獄」はエレベーターホラー。動く密室の閉塞感恐怖って心理的にやばいし、この終わり方は恐怖度抜群で面白かった。「バベル島」は若竹さんらしい怖さ。葉○寅吉さんってやっぱり寅年生まれなのかな。若竹ワールド入門にも最適な作品。2022/07/29
ダイ@2019.11.2~一時休止
120
ホラー系を集めた短編集?。表題作や回来なんかがイイ感じ。2016/09/28
aquamarine
91
若竹さんの持つ、最後にすっと背筋を撫でるように寒気を持ってくるこのテイストがとても好きです。それが十二分に発揮されている「のぞき梅」「影」そして最後にすべてを想像して震え上がった「上下する地獄」が印象的です。でもやっぱりここは表題作でしょう。バベル島で何が起こったのか、従弟と曽祖父の日記から紐解くわたし。曽祖父の名前が「葉村寅吉」であることから、読者としてはこの「わたし」がきっと彼女だろうと想像してわくわくします。そして怖気とともに与えられたのはミステリとしてのピースがかっちりはまったラスト。うーん流石。2020/04/06
papako
81
実は4000冊目用に、若竹作品の中で未読のこちらを選んだんですが、じっくり読みすぎで4002冊目になりました。これは帯にとおりでしたね。『幾種類もの怖さが詰まった』まさにそんな短編集。凝った仕掛けで読み飛ばせない。『白い顔』『上下する地獄』が好きかな。いや、あまりにも色々ありすぎて、どれもそれぞれ良かった。『追いかけっこ』頭が追いつかなかった。そして表題作の語り手は葉村晶ですよね?壮大な砂遊びにゾクっとする。うん、堪能しました。2020/02/24