内容説明
木造モルタル二階建て、築三十年は経とうかという何の変哲もない「家」。その家から主婦の死体が見つかった。死因は窒息死。帰宅した夫が発見したとき、家は完全に戸締まりされた密室状態だった。事故死の可能性が高まる中、刑事の執拗な捜査により、死体に秘められた、ある事件が浮かび上がる…。(表題作)「家」に篭もる人間の妄執を巧みな筆致で描く傑作推理全五編。
著者等紹介
歌野晶午[ウタノショウゴ]
1961年千葉県生まれ。編集プロダクション勤務中に島田荘司に師事し、’88年『長い家の殺人』でデビュー。名探偵・信濃譲二3部作を始め、乱歩の贋作原稿を扱った『死体を買う男』などで、新本格推理の旗手として活躍。2004年『葉桜の季節に君を想うということ』で第57回日本推理作家協会賞と第4回本格ミステリ大賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
89
家をテーマにした短編集。鄙・転居先不明なんかがイイ。2013/09/01
momi
46
ふふっ…ブラックですねぇ〜!この黒い感じ好きです!!五つのブラックユーモアミステリー!「家」をテーマにした短編集なのですが、話が濃厚なので短さを感じさせない楽しさがありました。表題作「家守」の殺害トリックと「鄙」の死体運びの方法には、それはないでしょ〜って思いながらプッとふきだしてしまいました…。それでもよくできた話なので、面白かったです!!この作家さんの他の作品もどんどん読んでいく予定です!!2013/08/02
えっくん
45
★★★★☆密室殺人など「家」を舞台にした5つのミステリー短編。トリックや時代背景などは古典的なイメージがありますが、時折り、過去の出来事や幻想が入り交じり、読み手側にオヤッと思わせるような変調もあり、ストーリー展開にアクセントをもたらす描写テクニックは流石です。どの作品も読み応えのあるボリューム感ですが、ラストの思わぬどんでん返しも美味しいおまけ付です。お気に入りは、かくれんぼをして遊んでいた彫刻師の家で行方不明になった友達の謎を描いた「人形師の家で」で、不気味感が秀逸です。2017/11/17
ミユ
43
5つの短編が収録されていて、どれも「家」をテーマにしている。短編とはいえ、どれも読みごたえは十分で人間模様もそれぞれ濃密。「人形師の家で」と「鄙」が好き。特に「鄙」の時代背景、人里離れた集落で起きるミステリーという舞台はツボ。個人的には最後に収録されている「転居先不明」が一番歌野さんらしい気もした。夫婦が越してきた家で過去に起きた凄惨な事件、その事件がまた怖い!2014/10/13
流竜会
40
歌野さんの作品は、「おっ」と思うトリックモノ、あるいは本格推理モノ、とバラエティに富んでいますが、本作は登場人物と「家(自分の居場所)」について描かれた短編集です。大がかりなトリックは表題作で見られますが(大がかりすぎるような奇想天外な?)、その他は人間の心の奥底にあるものについて、歌野さんならではの飄々とした筆致が印象的な作品でした。10年以上前の作品なので、新鮮さはありませんが、時代背景とマッチした人の気持ちなど違和感なく読めました。個人的には「鄙(ひな)」という作品をおススメします。k2015/05/16