内容説明
資産家の当主が、寝室に置かれた安楽椅子で死んでいた。現場は完全な密室状態で、死体には外傷がなかった。傍らには呪いを宿すという鬼女の能面が残され、室内にはジャスミンの香りが妖しく漂っていた。デビュー第一作にして、新趣向に挑み、絶賛された第三回探偵作家クラブ賞受賞作。同時期の短編「第三の解答」「大鴉」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
61
ノンシリーズ第1弾〔再読〕。アガサ・クリスティ「アクロイド殺し」、ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」を先に読んでおく事をお勧めする。昭和21年、神奈川の名家で起こる連続殺人事件。その物語は館ものであり密室であり、殺害方法が解らないという本格ミステリです。当時は海外の名作トリックを、自分ならこの様に演出すると多くの作家さんが挑戦した時期でした。日本のミステリの流れを読む上で、重要な位置の作品だと思う。そして二人の人物が、お互いに相手こそが犯人であると推理をぶつけ合う、そのロジックと緊迫感が本作の醍醐味だ。2018/05/01
山田太郎
59
いまどきこの手のはったり効いた本格物ってないもんだと思いました。なんかぐじぐじいじめとかDVとかなんで、こういう感じがいいもんだと思った。横溝・鮎川は評価高いけど、なんか少し評価低いのでかわいそうだと思いました。2015/09/03
geshi
30
高木彬光の初期は既存のミステリのアイデアを自分なりにアレンジし組み合わせる本格推理小説への挑戦者というイメージが強い。『能面殺人事件』ではクリスティー『アクロイド殺し』のネタバレまでして挑んでいる。密室トリックがなかなか想像しにくい所が難点だが、それに付随する犯人当てロジックの方に感心してしまう。エピローグでもう一捻りしてアクロバットを成立させている。『第三の解答』ポー『盗まれた手紙』への挑戦。使い古されたトリックを活かしている。『大鴉』顔のない死体への挑戦。トリックが誰に向いているのか?が見事。2018/04/24
さんまさ
13
おおお!これはアレではないですか!同収録の短編はアレですか!名探偵神津恭介の高木彬光にこんな作品があるとは思わなかったけどデビュー二作目って最初からこういう趣向も持っていた、と。昔の作家は凄いなぁ。2014/03/04
kinshirinshi
9
なかなかの野心作だ。終戦直後の昭和21年を舞台に、三浦半島の名家・千鶴井家が狂気と殺人によって崩壊していく過程を、鬼女の能面、ジャスミンの薫り、シェイクスピアや創作詩など、幻惑的なモチーフを散りばめて描く。クリスティやヴァン・ダインの古典ミステリを逆手に取り、探偵と助手、狂人と正気人、追う側と追われる側がくるりと入れ替わる凝った構成なのだが、そうしたプロットの妙より、根底を流れるセンチメンタリズムがいかにも高木彬光らしい。しばらく余韻に浸っていたい、物悲しい読後感だった。2021/02/20
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