出版社内容情報
雨が夜にしか降らなくなった都市を描いた表題作ほか、書下ろし「天窓」 「南洋の河太郎」2編等、真骨頂を味わえる全10編。
【収録作品】
化石屋の少女と夜の影
ヒトに潜むもの
封じられた明日
成層圏の墓標
車夫と三匹の妖狐
龍たちの裔、星を呑む
天窓
地球をめぐる祖母の回想、あるいは遺言
ゾンビはなぜ笑う
南洋の河太郎
あとがき
内容説明
奇妙な異常気象が続く世界で、コンビニ夜勤の“私”は謎の存在「雨坊」と遭遇する。接触した途端、それは破裂し、“私”は不思議な青い風景を見るように。後日、同じ幻影を描く画家・凜さんと「雨坊」の秘密へ迫っていく…表題作。化石に魅せられた15歳の少女、地球と宇宙で離ればなれになった女性たち、南洋で不思議な海洋生物と出会い人生の選択を迫られる科学者たちなど、全10編。読めば忘れられない余韻が、この1冊に!
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県出身。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。’10年に発表した『華竜の宮』が、「SFが読みたい!2011年版」にてベストSF国内篇第1位に輝き、第32回日本SF大賞を受賞した。SF以外のジャンルに、歴史小説の戦時上海三部作『破滅の王』(第159回直木賞候補)『上海灯蛾』(第12回日本歴史時代作家協会賞「作品賞」受賞)などの作品がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポチ
33
異形コレクションより6話、他4話の計10話のSF、伝奇、ホラーなどの短編作品。合わないのもあったが面白いのは面白かった。妖狐の話が好みです。2025/05/04
信兵衛
22
内容はヴァラエティに富んでいて、スケール感や発想の豊かさも抜群、さすがは上田早夕里さんならではの短篇集。 秀逸といって過言ではありません。 SF好きの方はもちろん、そうではない方にも、是非お薦め。2025/05/28
Mc6ρ助
20
上田早夕里さんの短編集、(ともすれば観念論に偏って見える)最近のSFに(なにを指しているんだ)ついて行くことに疲れているのかも知れない爺さまにはどこまでも優しく感じられる。いや、ディストピア度は「1984」、「侍女の物語」に勝るとも劣らないものがあるが、なにかしら確固として存在するものに根ざしているように感じられてさすがは上田さんだと好ましい。とてもとても楽しませて貰った小説にこんな感想しか書けない、歳をとるとは哀しいことだ(ほんとに歳のせいか?)。2025/06/05
本の蟲
14
ジャンル越境作家。《妖怪探偵》《洋菓子》ミステリシリーズは未読だが、「魚船・獣船」からの《オーシャンクロニクル》《戦時上海・三部作》が好き。本作も大正ロマン香る帝都、日本統治下のパラオ等、歴史SFがメインの短編集。といっても竜や妖怪が出てくる幻想譚。日常の怪奇恐怖譚。遥か未来の火星の話まで、やはりジャンルの幅は広い。壮大な物語のプロローグを思わせる世界観。深い余韻を残す満足感。読み味も様々だがどれも面白い。お気に入りは「車夫と三匹の妖狐」「地球をめぐる祖母の回想、あるいは遺言」2025/05/29
イツキ
11
異形コレクションに収録されていたものが中心の短編集。こうして改めて読むとどれも傑作揃いで非常に面白いです。ウェアラブルデバイスに擬態する生物と人間の暗闘が描かれる「ヒトに潜むもの」と、突如現れた天窓のような時空の歪みと行方不明になった人々について探っていく「天窓」は非常に面白く長編として読んでみたいとも思える題材でした。書き下ろしの「南洋の河太郎」は作者の歴史ものの作品にある重さと空想の生き物という題材が見事に合わさって考えさせられつつも楽しめる作品でした。2025/05/04