出版社内容情報
人間の身体と記憶を乗っ取る人工生命体〈蛇〉は、“衣裳替え”を繰り返し悠久の時を生きてきた。あるとき、最年少の〈蛇〉で女子高生に寄生する伍ノは、一族の長から満月の集いのための新しい衣装候補の調達を頼まれる。同級生を騙し廃墟の中の伝説の館に卒業旅行に行く伍ノ。そこで起こる惨劇。誰が人間で、誰が〈蛇〉なのか? 〈蛇〉独特のルールを利用した驚愕トリックと圧巻ロジックは「特殊設定ミステリ」の新たな極北に!
内容説明
寄生、消滅、召還…特殊条件下の本格パズラー。あなたは“蛇”?それとも人間?人間の身体と記憶を乗っ取る人工生命体“蛇”は、“衣裳替え”を繰り返し悠久の時を生きてきた。あるとき、五匹の“蛇”はそれぞれ、何者かに襲われ、一匹の“蛇”が行方不明になる。最年少の“蛇”で女子高生に寄生する伍ノは、一族の長から事件の調査を任され、さらに満月の集いのための新たな衣裳候補の調達を頼まれる。同級生を騙して廃墟となった伝説の館に卒業旅行に行く伍ノだが、それは惨劇の幕開けだった…。
著者等紹介
松城明[マツシロアキラ]
1996年、福岡県出身。九州大学大学院工学府卒業。2020年、短編「可制御の殺人」が第42回小説推理新人賞最終候補になり、’22年に同作を表題作とした連作短編集『可制御の殺人』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
122
干支を楽しむ読書の一冊。人間の身体と記憶を乗っ取る人工生命体の蛇が繰り広げる特殊ミステリは絡まり感とほどけ感、両方の楽しさを満喫した。乗っ取ることを"衣装替え"と表現するところがなんともシャレてる。そんな衣装替え調達のために伝説の館に集められた高校生たち。そこでお決まりの惨劇が…という展開。人間と蛇の入り混じりはまさに2体がお互いをのみこむようなウロボロスの輪のよう。途中、頭の中はとぐろ状態だったけれど蛇一族のルール、細かいあの瞬間が2体を綺麗に離してくれた。このラストも良かったな。いろいろキュッとくる。2025/01/28
麦ちゃんの下僕
120
2025年1冊目は、巳年にちなんでこちらを。特殊設定ミステリーは、現実世界ではあり得ないトリックやロジックを生み出せるのが魅力である反面、それを成立させるのに必要なその作品独自の“ルール”を読者にしっかり理解してもらわないと面白さが半減してしまいます。この作品で設定されている“ルール”は10項目(232~233ページ)…ちょっと多いですね(苦笑) 帯で法月綸太郎さんも「脳がオーバーヒート寸前」と書いてある通りやや難解すぎる気はしますが…最後の最後で明らかになる“真の動機”と余韻の残る読後感は実に秀逸です!2025/01/09
yukaring
71
人間の身体を乗っ取る人工生命体〈蛇〉の存在。寄生や召還、消滅。いきなりの特殊すぎる特殊設定に驚く暇もなく展開されていく謎の事件と密室殺人。ゴリゴリのロジックを効かせた本格を楽しめる1冊。5匹の〈蛇〉は人間の身体を取り替える「衣裳替え」を繰り返し悠久の時を生きる。しかしある日〈蛇〉たちは何者かに襲われ一匹の〈蛇〉が行方不明に。危険を感じた彼らは新たな衣裳替えのため、衣裳候補の人間を集め伝説の館へ赴くが不可解な連続殺人が発生。犯人はヒトなのかヘビなのか?鮮やかなトリックや綺麗に着地するラストも読み応え充分。2024/11/28
aquamarine
71
特殊設定モノの極北!という帯は間違いではないかもしれない。人間の身体と記憶をのっとる生命体(蛇)が主人公であり視点。人間でないものにいささか怯むが、いきなり変わった形の「涼月館」の見取り図も現れテンションがあがる。一度にではなく小出しにされる特殊設定のルールは完璧。途中には密室も出現し、殺人(蛇?)や誰が人間で誰が蛇なのかといった謎もあり、作者の作り上げた特別な世界に夢中になった。特殊設定には好みがあるだろうが、私は特殊設定だからこその論理的にきっちりと組み上げられる解法がたまらない。綺麗な結末に感嘆。2024/10/07
ままこ
65
悠久の時を生きる呪われた〈蛇〉一族。人の脳を喰い、身体と記憶を乗っ取り〈衣装替え〉を行なって再生を繰り返す。序盤からえっ!となる衝撃的なことが起こり、写真部を巻き込んだ裏切り者探しが始まるが…。特殊設定を駆使した推理合戦。複雑なトリックに思考がこんがらがりながら、先が全く見えない展開を追いかける。あちこちの伏線が回収され真相が明らかに。あっなるほど、そういうことか。用意周到で潔いラストへと繋がる。残酷で切ないが、軽やかさと温かみもあるホラーミステリー。ツッコミどころもありながら楽しめた。2025/01/31