内容説明
自己の弱さ、卑しさを断罪し、飢餓状態にある人間の“業”を描く半生の告白。
目次
妹のたたり
『火垂るの墓』は自己弁護小説
「死」と「血」の穢れ
母と祖母の確執
父の行方不明
空襲後、初めて涙がこぼれた
『火垂るの墓』の呪縛
妹の火葬
妹の骨の入った缶
養子先での少年期
闇市の食いもの
盗みがばれた
家出
多摩少年院東京出張所
過去にせせら笑われている〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリータ
14
『火垂るの墓』創作にまつわる話と事実との相違、『一九四五・夏・神戸』の結末以降の福井疎開・妹の死・北河内での暮らしのエピソードが、還暦を迎え突然食欲をなくすというエピソードの時点を軸に語られる。前二作品の創作部分が何に基づいているのかを知るのに良いと思う。しかし養家をあっさり捨てる話というのも、自覚的に書いていながらむごい。ついでだがあまり歩いたことのなかった原田通りを王子公園から新神戸まで歩いて上筒井や雲中小学校のあたりも見ました。読みながら阪急で夙川や御影とか作中の場所を通ると妙な感覚になりますね。2015/07/06
モリータ
7
◆書き下ろし1992年光文社刊。再読。◆「戦災孤児の神話」の部分、つまり祖母・養母との離別の事実について、確認のため読む。しかし諸作品における過去の細部に至る写真的再現は(それが事実と異なる箇所があるにしろ)異能だろう。◆「つれて、何の脈絡もなく、焼跡、焼跡につづく時間場所、に意識が逆行、時には、この妄想を保ちたくて、一人になれる場所、喫茶店、書斎に身を置き、ほっつき歩きもする。(略)この妄想が、初期の頃の、ぼくの小説の骨格を成し、ただ、書く作業、自分の文字を原稿用紙一枚四百字を視野に入れていると、(続2022/11/24