出版社内容情報
メディアの表層の変化だけでなく、紙でもインターネットでも変化しないものは何かを考えることが大事である。2020年代のニュース論。
内容説明
それでも、希望はある!気鋭のノンフィクションライターによる新時代のメディア論。
目次
第1章 ノーベル文学賞作家とフェイクニュース
第2章 インターネット時代のニュースとは何か
第3章 「良いニュース」の五大要素
第4章 新しい記者になるための条件
第5章 インターネットメディアの新しさと難しさ
第6章 ニュースと出版文化の相性
第7章 「良いニュース」を創るために
終章 ニュースの未来
著者等紹介
石戸諭[イシドサトル]
1984年、東京都生まれ。ノンフィクションライター。立命館大学法学部卒業後、2006年に毎日新聞社に入社し、2016年にBuzzFeed Japanに移籍。2018年に独立してフリーランスのライターに。2020年に「ニューズウィーク日本版」の特集「百田尚樹現象」で「第26回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」、2021年に「文藝春秋」掲載のレポートで「PEPジャーナリズム大賞」を受賞。週刊誌から文芸誌、インターネットまで多彩なメディアへの寄稿に加え、フジテレビ、朝日放送などへのテレビ出演と幅広く活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nnpusnsn1945
60
良いニュースは、謎、驚き、批評、個性、思考があるものを指し、特定の陣営(イエスかノーかの対抗軸)を満足させるだけのものではない。それだと、自分たちの信念に合致するグループ内でシェアされて終わる可能性があるからだ。具体的な例としては沖縄の基地や福島の原発問題などがそうなりがちである。著者は筑紫哲也氏は尊敬できる点はあるが、物事を善悪の二項対立で捉えがちであるとの短所を指摘している。私は権力に媚びるよりは反骨の方がマシなのだが、軽々しく民の視点こそ絶対的な正義とする意見には違和感を覚えている。2021/08/31
ころこ
42
ネット時代にフェイクニュースが問題になり、他方で高齢化による新聞離れが進んでいく中で、ニュースのあり方、見方を再考する本です。テクノロジーが発達した時だからこそ、ニュースの送り手受け手双方が意匠に騙されないで本質を見抜く力が試される。従来通りの古いことが書かれていますが、人文学で古典を読み返し、時代に応じて読み替えることと同じことが行われています。送り手の立場に立つのはメディアリテラシーを養うためでもありますが、新聞から供給される送り手の質の低下、人材の枯渇による生態系の破壊への危機感の表れでもあります。2021/08/18
こも 旧柏バカ一代
35
フェイクニュースを駆使して政権を取った(?)トランプ。(1期で終わった)それを利用して遂に戦争を開始したが一般市民のSNSの反撃で苦戦しているプーチン。世の中の情報収集の仕方が変わり、ボルトネックだった新聞、テレビ、ラジオなどのニュースのあり方も変わって来た。それに対応しようと足掻くが上手く行かず楽な方に堕落する大手達。それを利用する行政、、どうやって速く、質の良い情報を手に入れるか。どうやってフェイクニュースに踊らされ無いようにするか、、本当に恐ろしい時代になったと痛感中。2022/03/19
nbhd
20
普段メディアの仕事をしている僕は、石戸さんの「取材記事から“こぼれおちたもの”を愛おしくおもう気持ち」を感じて、熱くなった。良かった。この本は、各種メディアの特性や組織を無視した“ジャーナリズム魂”にもとづくジャーナリズム論とは毛色が異なる。新聞やネットメディアの記者として経験した失敗や迷い、痛みと向き合ったうえで、それでもなお…、と未来のニュースの方法論を前向きに整理していく。それは「“こぼれおちたもの”からの構築をフォーマットとする手法」と言えるかもしれない。まっ、現実社会は、なかなか厳しいのだが…。2021/09/24
おっとー
12
深い調査もなく万人受けするニュースを発し、読まれた数だけを競う、いわゆるバズることだけを重視する昨今の世界から一線を画したニュース論。良いニュースは謎、驚き、批評、個性、思考があり、時間が経っても興味深く読まれるものである。そしてこうしたニュースを産み出すには現場に赴き、人の話を丁寧に聴くことが欠かせない。ニュースの形式はテンプレ化した客観的速報も大事だが、柔軟に分析や物語を織り混ぜることも重要である。一喜一憂し、あっという間に消費されるニュースではなく、咀嚼するほど味の出るニュースが求められている。2022/01/19