内容説明
あなたが矛盾しないことをあなたは証明できない―人間の理性に限界があることを証明し、神の存在証明をも行った“アリストテレス以来の天才”。その思想の全体像を、はじめて平易に解き明かす。
目次
1 不完全性定理のイメージ
2 完全性定理と不完全性定理
3 不完全性定理の哲学的帰結
4 ゲーデルの神の存在論
5 不完全性定理と理性の限界
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
36
恥ずかしながらいきなり私事・私語りを書くと、ぼくは文系で数学が大の苦手で、「不完全性定理」についてもなんら理解できていない(せいぜい「クレタ人のパラドックス」などのメタファーをとおしてかじっただけだ)。そんなぼくであってもこの本を通してすこしゲーデルの「哲学」に親しみ、彼の数奇な人生に触れて親しみすら感じられたかなと思う。愚直に推論・論理を重ねて究極まで突き詰められるまぎれもない大天才であり、その反面その論理癖がみずからをも苦しめて「神の存在証明」を問い詰めるところにまで行き着いてしまった男。実に人間臭い2025/05/10
かんやん
31
「より高度な存在は、言葉ではなく、アナロジーで結びつく」(ゲーデル)。だからなのか、論理パズルやパラドックス(嫌いじゃない)のたとえを使って、不完全性定理を説明する。こんなんで、ええんかいな。それよりは学問的な背景をもっと詳しく解説して欲しかった。神の存在論的証明というのも、かなり怪しげ。それらよりも、不完全性定理の哲学的帰結を論じるギブズ講演が面白い。計算可能性をアルゴリズムで定義したチューリングを引用しながら、人間は有限機械を上回ると結論づけるのである。このあたり意識はアルゴリズムで解けるのかという→2019/11/13
ワッピー
28
読み友さんの感想から。論理学に関わる内容は速やかに歯が立たなくなったので、ゲーデルの人となりやプリンストン高等研究所の錚々たる面々の名前を含む人間関係と学説史を楽しみました。冒頭から面倒な公式をわかりやすくアナロジーに置換して不完全性定理を説明していて、理解できていないのに言うのもなんですが、本書は相当わかりやすく解説していると思われます。ゲーデルが大統領選でアイゼンアワーに投票したと知ったアインシュタインは心配して大丈夫なのかと助手に聞くと、「いつも以上におかしくなるなんて、想像もできませんが」⇒2020/09/24
mitei
21
ゲーデルという人物はよく分かった。しかし不完全性定理があまり理解しづらかった。アインシュタインが晩年ゲーデルと親交があったのは驚いた。2011/01/29
nbhd
19
ゲーデル(14)暇を見つけては不完全性定理の写経。そんなかで、結局どのゲーデル本が良いのかを考えて、結果。で、それがこの本(あと「無限論の教室」)。ゲーデルの理解には2冊の講談社現代新書で最低限の事は足りる、という結論に至った。この本がカバーするのは不完全性定理だけでなく、ゲーデルの伝記に、晩年の仕事(神の存在証明!=世界は合理的に構成されている。もし来世がなければ、世界は合理的に構成されている理由がない。ゆえに、来世は存在する)、それからゲーデル以降の数学基礎論の考え方まで。なんにせよ、お得な本だ。2016/03/06