内容説明
二〇一五年三月、「線虫が、非常に高い精度でがん患者の尿の匂いを嗅ぎ当てる」という論文が米科学誌に掲載され、報道番組でもトップニュースとして報じられた。九州大学の研究者だった著者は、その後起業し、実用化に向けた研究を重ね、医学界への普及活動に邁進してきた。たった尿一滴で、ステージ0の段階からがんが検知されることで、がん治療はどう変わるのか。なぜ、線虫だったのか。検査に機械ではなく生物を用いる「生物診断」の可能性は?各種メディアで注目の研究者・経営者が、自身の歩みや、誰も思いつかなかった研究を生み出した発想法、研究者を目指す若者への提言などを交えつつ、二〇二〇年の線虫がん検査「N‐NOSE(エヌ・ノーズ)」実用化で大きく変わるがん検診とがん治療の今後の展望を伝える。
目次
第1章 「がん検査」と「がん治療」が大きく変わる(線虫がん検査「N‐NOSE」で、何が変わるのか?;「N‐NOSE」が占める位置と、果たす役割)
第2章 なぜ、線虫だったのか(そもそも線虫とはどのような生物か;どのように「N‐NOSE」は実現されたのか;まだ謎の多い「嗅覚」の仕組みとは)
第3章 「謎の学生」だった私が、「がんの匂い」に出会うまで(教科書に書かれていないことを見つける;就職して、研究への思いに気づく;犬にできるなら、線虫にもできるはずだ!)
第4章 研究から起業へ―N‐NOSE実用化のステップ(「研究者は経営に向かない」は本当か?;予想を上回った実用化への期待)
第5章 N‐NOSEが世界を変える(世界の中のN‐NOSE;大きな可能性を秘めた生物診断の世界)
著者等紹介
広津崇亮[ヒロツタカアキ]
1972年山口県生まれ。株式会社HIROTSUバイオサイエンス代表取締役。私立東大寺学園高校卒業。’97年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。同年サントリー株式会社に入社。翌年退社し、東京大学大学院博士課程に入学。線虫の嗅覚に関する研究を開始。2000年3月、線虫の匂いに対する嗜好性を解析した論文が英科学誌『ネイチャー』に掲載。’01年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、京都大学大学院生命科学研究科研究員、九州大学大学院理学研究院助教などを経て、’16年より現職。’18年よりオーストラリアのクイーンズランド工科大学招聘准教授。井上研究奨励賞、中山賞奨励賞、ナイスステップな研究者(文部科学省)などの受賞歴がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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