内容説明
「存在論」とは、何かが「ある」とはどういうことかを考える哲学の一大分野である。起源は古代に遡るが、現代では、ある事実が成立するためには何が存在し、存在するもの同士はどのような関係にあるかを問題にする。具体的にはあらゆる事象の前提、すなわち世界がよって立つ基礎を考察している。私たちの「当たり前」を問い直すことで、日常は違った相貌を現す。哲学の最前線を体感するスリリングな講義。
目次
序論 日常世界を哲学する
第1章 ハラスメントはいかに「ある」か?―「社会的事実」を考える
第2章 「空気」とは何か?―「社会規範」の分析
第3章 集団に「心」はあるのか?―全体論的アプローチ
第4章 時計は実在するのか?―「人工物」のリアリティーについて
第5章 サービスの存在論―私たちが売買する時空的対象
第6章 キャラクターの存在と同一性―「人工物説」の立場から
著者等紹介
倉田剛[クラタツヨシ]
1970年生まれ。九州大学大学院人文科学研究院准教授。慶應義塾大学文学部卒。パリ大学第12校DEA課程を経て、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門はオーストリア哲学、分析形而上学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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禿童子
37
缶コーヒーのCMに出てくる人間そっくりの異星人が地球人の慣習をどう解釈するか、という最初の釣り文句は卓抜ですね。実に読みやすく、比喩も分かりやすいので、存在論に興味のある方はご一読をお勧めします。ただ、「トークン」、「インスタンス」、「タイプ(種)」といった術語が飛び交うので、読み終わった後に私がどれだけ理解できたかは疑問です(笑)。2021/03/01
ちくわ
24
それなりの方が日常世界を哲学すると、こういう風になるのか!という新鮮な驚きがあります。ありふれたことも、それを成立させる要素・背景を考えていけば、自分の向き合い方が変わってきます。それが哲学の楽しいところですね。(☆4)2021/07/28
武井 康則
8
哲学の存在論の考え方を事例を交えてわかりやすく説明している。ハラスメント、場の空気、集団の心理、時計などの人工物、サービス、架空のキャラクターについて、日常生活ではたしかに存在するけど、哲学的に、どのカテゴリーに属するのか。それはどんなテーゼを満たせばいいかなど、解説している。齟齬なく話すためには同じ定義の上で語らねばならない。一見当然と思えるものを定義する難しさと厳密であることの方法を学べた。表題が悪い。「存在論の基礎」では売れないだろうけど、これでは詐欺と思う人もいると思う。 2019/09/18
oooともろー
5
ハラスメント、人工物、サービス、キャラクターなど、ごく普通のモノやコトを存在論から哲学する試み。思考訓練として面白い。これがどのような解決につながっていくのか。2020/02/24
愛楊
4
2019年。『現代存在論講義』の副読本のような感じ。社会存在論で唯一読め、かつ手軽な邦書として優れていると思う。ブラッドマンのような共同行為論と合わせて読むと面白いかもしれない。ただ、結局共同体の心的概念を解釈主義で処理するのは、回り回って当たり前のことを主張しているようにも思える。個人的にはフィクション論はあまり興味が無かったが、ルイスのconventionはとても導入として役に立った。「規範性なき社会規範」は後期ウィトゲンシュタインの原初的規範と繋がっているのかが気になりSEPを読んだが、無かった。2025/01/08