内容説明
日本人は、日常生活で日本語を当たり前のもののように使っているが、日本語を世界の言語の中に位置づけてみると、かなりユニークな文字を用いていることが分かる。本書では、漢字と日本語が交錯する「訓読み」に焦点を当て、その特徴をあぶりだしてみたい。中国で生まれた漢字を受け入れ、それを固有語である大和言葉で読んだことが、日本での訓読みの始まりである。元々は漢字の読みとして始まったが、様々な外来語を日本語化し、また逆に漢字を外来語で読み、さらに現代では絵文字まで読んだりする現象も含まれるなど、訓読みとはかくも広範囲で深みのある世界なのである。
目次
第1章 訓読みの歴史
第2章 音読みと訓読み
第3章 多彩な訓読み
第4章 訓読みの背景
第5章 同訓異字のはなし
第6章 一字多訓のはなし
第7章 漢字政策と訓読み
第8章 東アジア世界の訓読み
著者等紹介
笹原宏之[ササハラヒロユキ]
1965年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得、博士(文学)。現在、早稲田大学社会科学総合学術院教授。専門は、日本語学(文字・表記)。経済産業省の「JIS漢字」、法務省法制審議会の「人名用漢字」、文部科学省・文化庁文化審議会国語分科会の「常用漢字」などの制定・改正に携わる。著書『国字の位相と展開』(三省堂)で第35回金田一京助博士記念賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
48
訓読みという手法を、現代まで普遍的に継続させたのは、日本だけ。あまりにも日常的なためか、訓読みの世界のおもしろさは、日本語使用者自身には、なかなかピンとこないものである。この本で改めて訓読みの奥深さ、おもしろさがわかる。著者は国字の専門家として知られている。国字の読み方は、普通は訓だけしかないが、そんな文字を多数作ったのも、日本語の特色といえるかも。2017/10/17
西澤 隆
5
「訓読み」とはどんなことなのかなんて考えてみたこともなかった。漢字とともに中国から渡ってきた音に対応する意味の自国の言葉をつけるのが訓。だから日本以外にも訓読み的な使われ方はある。一度ついた訓読みに対して字形や部首などから引っ張られる形で別の音読みができたり、そこから字が生み出されたり。いろんなつながりでどんどん化けていく文字。それを仕組みとしてシステマチックに分析する読み物はとても刺激的。英字の筆記体を誤解から漢字のように扱ってしまった「℥」などいろんなトリビアも満載で何度でも読み返したい一冊なのです。2017/12/13
のんき
5
音読みと訓読みの違いくらいなら分かると思っていたけれど、そう単純なものではないのだという事例があとからあとから出てきます。タイトルに「はなし」とあるけれど、日本語はどうあるべきか的な「はなし」は出てきません。個々の事例に則した「はなし」が出てくる、読み物というよりは事典のような本です。事例を見ていくうちに「発明は苦手だけど改良は得意な日本人」の原点ここにありかも、という気分になりました。何を読み取るかは読む人次第ではないでしょうか。2009/03/21
れいちゃん
3
漢字の訓読みについて改めて考え直す良いきっかけとなった。国字研究の第一人者と目されるだけあり、本書の情報量には脱帽するが、具体的な漢字を列挙し個別に説明が加えられているので雑学感が拭えないのが難点。2020/05/17
たつるん
3
日本語の訓読みは、感じの文化圏内でも特異なものである。 近年皮膚を皮ふと書いたりする傾向があるが、難しい感じや訓読みがもっと保存されてもいいじゃないかと思う。 文字や言葉、またその難しさ自体も文化そのものなのだから。 2018/03/13