内容説明
数字データでは語れないさまざまな現実を、いかに取り出すか。
目次
第1章 数字でどこまで語れるか
第2章 はいりこむ
第3章 あるものになる
第4章 聞き取る
第5章 語りだす
第6章 「あたりまえ」を疑う
第7章 「普通であること」に居直らない
著者等紹介
好井裕明[ヨシイヒロアキ]
1956年大阪市生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在は筑波大学大学院人文社会科学研究科教授。京都大学博士(文学)。専攻は、差別の社会学、エスノメソドロジー、映画の社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
33
(p.120)「あんたは、私の話ばっかり聞き出そうとして、いったい何者なんだ、あんたは私の話をどのように思い、どう聞いているのか、ちょっとは自分のことも話したらどうか」◉(p.79)どのような現実であれ、「はいりこむ」営みは、確実に「はいりこむ」本人を変貌させる。変貌する自らの姿を承認し見つめること、どのように変貌したのかを読み解くこともまた、社会学者が世の中を調べることの重要な部分なのである。2021/06/10
アナクマ
30
「いま(06年)社会学に注目が集まっている」かどうか分からないけど注目してる。質的調査のためのセンス/マインドを伝えたいという。ゆえに教科書風でなく私語りを採用したのか。◉1.2.3章「調べる私」が受ける影響、変貌を見つめることを強調。ここは重要に思えるポイントで、学びであれケアであれ他者理解であれ、不変の自分を想定するとうまくいかないはずだ。しなやかさを纏いたい。◉具体的な注意点→ お前は何者か? 何ができるのか?(p.120 お互いをまなざす時間。p.98 関係を秩序だてるのが技量・芸の巧さ)→2020/01/16
ちくわん
18
2006年2月の本。初めて読んだ。ご自身も含め数々の社会学者か実践したフィールドワークを引く。調査対象でなく、調査する側のあり方を大切にする。形式や効率に走り、心(リサーチ・マインド)に欠けてはいないか。要領よくまとまったテキストからは学べない、それが「本当の社会学」である。というより、何でもそうな気がしてきた。2023/05/24
服部
12
SFCに通う友人に勧められて読みました。社会学の調査をする際、どんなことに気を配らなければならないのか、それは何故なのかが書かれていたところが最も印象に残っています。これは社会学に限らず、日常生活のコミュニケーションでも言えることだと思ったからです。「相手に聞く」という行為は「相手の領域に踏み込む」ということでもあることを理解した上で質問できる人が果たしてどれほどいるのか。普段の対人コミュニケーションを振り返る良いきっかけになりました。これから何度も繰り返して読みたいと思える本です。2018/11/23
西澤 隆
9
社会学の「フィールドワーク」では時に調査対象のひとたちの内面にズカズカと入り込んでしまう必要があることもある。表面を撫でるだけの無難な調査は調査ではないし、かといって調査によって相手をどんな目に遭わせてもいいわけでもない。ならばどんな覚悟を持ってどんなことを引き請ける必要があるのか。技法というよりもその前提としての心構えを伝える本という印象を受けた。マスコミのひとたちにもこういう感覚は持って欲しいなあ。僕はこの分野の人ではなく実例として紹介されている本はほとんど未読なだけに読みたい本がいくつもできました。2015/06/06