内容説明
二〇〇二年キャラクター人気ランキング第一位!日本中にあふれる、プーさんグッズの数々。いまなぜ、プーさんは男女を問わず、人々の心をとらえるのか?その疑問を解くため、筆者は、物語が誕生した一九二〇年代のイギリスにたちもどり、プーさんが生まれた時代背景と、作者であるひとりの父親と息子のストーリーをひもといていく。実在の森と田園を舞台に、作者ミルンは類いまれな想像力とユーモアを駆使して物語を紡いでいった。キャラクター人気のかげで、今まであまり顧みられることのなかった多彩な原作の文学世界を正面から論じた一冊。
目次
序章 ちっぽけな脳みそのくま
1 くまと物語
2 作者ミルンの生い立ち
3 プーさん誕生前夜
4 『くまのプーさん』の世界
5 『さあぼくたちは六歳』
6 『プー横丁にたった家』
7 物語がのこした光と影
著者等紹介
安達まみ[アダチマミ]
1956年生まれ。聖心女子大学文学部助教授。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
9
「do Nothing」という言葉が、最初に紹介されています。ミルンが、もしかしたら、一番愛していた言葉かもしれない。「Nothing」つまり「とるにたらないこと、とりたてて役にたたないこと)です。これをする、ということとは、なに? 暇をつぶす、とはちがいます。「べつになんにも」をすること、なのです。これができなくなったとき、プーの物語は終わります。そんな言葉を残した、ある作家の物語です。 2008/11/29
つっつん
3
ディズニーの黄色と赤のイメージのくまのプーさんではない、原作の文学としてのプーさんを解説してくれる一冊。プーさん好きが講じて読みましたが、著者の背景にあるものを知ることでより深みが増してプーさんを好きになれそうです。最も印象に残ったのは著者と息子さんが不仲になったこと。大人になってから父親の作品に対する嫉妬により絶縁関係になったらしい。プーさんという作品を生み出すことができても、親子関係というのは難しいものです。2014/12/18
kan
2
再読。プーさんの生みの親ミルンも、ルイス・キャロルも、ビアトリクス・ポターも、内在する子ども性を作品にして思いがけず売れ、のちに苦しんだり違和感を覚えたりするという共通点が興味深い。大衆の求めるものと自分の作りたいものとのギャップ、作品が独り歩きしてしまう際に生じるズレ、家族関係の変化は創作活動には重大な要素であろう。著者による詳細なストーリー分析と、ミルンの生涯や時代背景解説が素晴らしい。「べつになんにも」をするために、プーやクリストファーロビン達がPoohsticksをした橋を訪ねてみたくなった。2021/03/21
グッキー
2
著者ミルンとその父、兄などとの関係などを通じてプーさんが誕生するまでの話は心温まる話だ。しかし、プーさん誕生以降は決して平坦な人生ではなかったことに心動かされる。しかもそのことには二度の大戦が大きく影を落としており、戦争がいかに人々の人生に影響を与えるかを思い知らされた。2013/07/23
わっち
0
シェパードの挿し絵に癒される2008/07/27