内容説明
「鉄道公安官」とは、昭和22年から国鉄分割・民営化まで活躍した、「鉄道公安職員」の通称。現在、その役割は都道府県警による鉄道警察隊に引き継がれているが、当時はれっきとした国鉄職員であった。本書では、国鉄マンとしての誇りを持ちながら、駅や列車内でのスリ、窃盗、暴力事件などと戦い続けた、その全貌を、新たな資料とインタビューにより明らかにする。鉄道という閉じた「舞台」ならではの犯罪エピソードも興味深い。
目次
第1章 1%未満のプロフェッショナル
第2章 それでも列車は走っていた
第3章 誇りと重みの黒手帳
第4章 犯罪者は鉄道がお好き
第5章 われら、強く優しき国鉄マン
第6章 鉄路の友は、デモのなか
第7章 昭和62年3月31日
資料編
著者等紹介
濱田研吾[ハマダケンゴ]
1974年大阪府交野市生まれ。ライター・編集者。社史や企業PR誌の執筆・編集のかたわら、昭和時代の芸能史、映画史、放送史、広告文化史、鉄道史を研究。著作や雑誌などに発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hitotak
6
鉄道公安官とは、国鉄職員でありながら、集団強盗やスリが多発したという戦後直後の駅及び列車内の治安を保持するため、進駐軍肝いりで作られた組織だとか。アメリカの保安官風に、無理やり拳銃所持もさせられたが、結局公安制度中に発砲されたことはなかったという。国鉄労組の順法闘争で巻き起こる混乱、列車転覆等をたくらむ過激派への警戒など、今以上に駅や列車で乗客が危険に晒されていた現実があり、公安官OBたちの当時を振り返るエピソードには、苦労の中にも誇りを持って職務に当たっていた当時への充実感が感じられた。2019/04/05
ことぶき あきら
3
鉄道の施設内などの治安維持は現在、各都道府県警察の鉄道警察隊が管轄していますが、その昔、国鉄が分割民営化される前は、司法警察権を持った鉄道公安職員(鉄道公安官)が行っていました。鉄道公安職員は警察官ではなく、国鉄の職員です。「鉄道公安機動隊」まで組織されていました。鉄道公安制度の成立までの経緯や、鉄道公安職員のエピソードなどが紹介されています。司法警察権を持ち、鉄道犯罪の取り締まりをする鉄道公安職員ですが、公安職員である前に一人の国鉄マンであるというのが、元公安職員の人たちの話から伝わってきます。2015/05/24
おいしゃん
3
国鉄を裏で支えた男たちの熱い想いが伝わってきた。2014/01/14
晴天
1
企業体が法執行機関を保有することには難しさがあり、旅客へのイメージを第一とし、皇族の警護などの事情がない限りは拳銃も携行せず、法整備の限界なのか逮捕した犯罪容疑者の拘留施設もなく、さらには国鉄全職員に売上増の発破がかけられたときは「全職員」には鉄道公安職員も含まれセールスで大成果を上げたが検挙率は激減したという話もあり、鉄道公安という制度の特異性が浮き彫りになる。しかし見切り発車的にもそうした組織を必要とした鉄道治安の過酷さがあり、また、歪な制度の中でも日々奮闘した鉄道公安職員たちの矜持が存分に描かれる。2021/11/03
へm
1
松戸の鷹とかの話が出てくるかと思ったが、あくまで公安官サイドの話だけだった。とはいえ国鉄時代をほとんど経験していない身にとっては謎に包まれた鉄道公安官を少しだけでも垣間見ることができた気がする。2017/07/26