内容説明
織田信長の事蹟を、永禄十一年から天正十年の本能寺における最期まで、全十五巻に記述する。大田牛一撰「信長公記」を根幹としつつ、多くの諸記事を撰述附加したものであり、伝統的な戦記文学として近世を通じて愛好された著作。寛永元年板本を底本として頭注を加えた。また、「清須合戦記」「道家祖看記」「南蛮寺興廃記」「総見院殿追善記」を収めて信長の生涯を更に明らかにする。
目次
興亡
光源院殿御最後の事
義昭公潜に南都を落ち給ふ事
信長公御先祖の事
三川国小豆坂合戦の事
織田備後守殿病死の事
平手中務大輔清秀極諌を致し自害せしむる事
尾張国海津合戦の事
信長清洲城に移り給ふ事
尾張稲生合戦の事〔ほか〕
著者等紹介
石井恭二[イシイキョウジ]
昭和3年2月、東京に生まる。校注書、狗張子、備前老人物語・武功雑記、等。共に現代思潮社刊(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
430
信長16歳、父の葬儀の場が最初のエピソード。「異体なる出立にて、仏前へ歩み寄つて抹香括つと摑んで投懸け」という巷間によく知られたもの。この上巻では、やがて上洛し安土城を建てるまでが描かれる。最後の軍記とも称される『信長記』だが、文体はたしかに軍記そのもの。ただし、例えば『平家物語』が持っていたような世界観はそこにはない。この上巻ではひたすらに合戦が続くばかり。むしろ、記録文学であるかのような趣きである。終盤には、これまた名高い髑髏杯の酒宴と正倉院の秘宝、蘭奢待を切り取るというエピソードが披瀝される。2020/07/07