出版社内容情報
現象学の立場から文学的作品を構造分析し,声音形像の層,意義統一の層,図式化された象面の層,呈示された対象の層の四層結合による多声的性格を明らかにする。
【目次】
第1篇 予備的問題
第1章 発端の問題
第2章 文学的作品の組成に属さない形象の排除
第2編 文学的作品の組成
第3章 文学的作品の根本構造
第4章 声音形象の層
第5章 意義統一の層
第6章 文学的作品における意義統一層の役割
第7章 呈示される対象像の層
第8章 図式化された象面の層
第9章 図式化された象面の層の文学的作品における役割
第10章 文学的芸術作品における呈示された対象像の役割といわゆる作品
の「理念」
第11章 文学的作品のおける継起の順序
第3篇 補完および結論
第12章 境界事例の考察
第13章 文学的作品の「生」
第14章 文学的作品の存在的位置
第15章 文学的芸術作品についての最終考察
附録 演劇における言語の機能について
原注
訳者あとがき
ローマン・インガルソンの哲学的著作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぷほは
3
某書籍フェアで購入後、2年くらいほっぽってた本。初版は1930年代で、現象学の誕生間もない頃の、単なる網羅ではない綜合性、単なる緻密ではない厳密性、そして単なる難解ではない重厚性が揃った芸術哲学における基礎文献の一つ。絵画論における直観主義や心理学主義を退け、文芸における志向の多層性を検討しポリフォニーとしての芸術作品を捉えるといった趣向。記号論や解釈学と被る論点もあり、あっちの方がよっぽど明快で面白い、という人もいるだろうが、ここまでキッチリやり通す人も希少なため、読む人が読めば少なくとも退屈はしまい。2018/02/14